事業継続力強化計画の変更申請方法【申請書と報告書記入例】
変更申請について
事業継続力強化計画の認定を受けた後、認定を受けた事業継続力強化計画を変更しようとする時には、変更をしなければならない(経済産業政省令)、とされています。
事業継続力強化計画の実施時期(実施期間)は3年以内となっており、認定を受ける際には3年間で認定を受けるケースがほとんどでしょう。企業を取り巻く外部環境はハイスピードで変化していますので、事業継続力強化計画の認定を受けた期間内(3年間)において、内容の変更を伴うような事象が生じることは珍しくありません。
認定を受けた事業継続力強化計画を変更し、改めて認定を受けることを「事業継続力強化計画変更申請」と言います。
変更申請を行うにあたっては、変更申請書や実施状況報告書の提出が必要となります。具体的にどのように記載・入力を行っていけば良いのか、記入例とともに解説をしていきます。
変更申請の対象(事由)
認定を受けた事業継続力強化計画を変更しようとするときに変更申請を行うもの、とされていますが、ここで言う「変更」には軽微なものは含まれません。
事業継続力強化計画策定の手引きによれば、「資金調達額の若干の変更」、「法人の代表者の交代」など認定を受けた事業継続力強化計画の趣旨を変えないような軽微な変更は、変更申請は不要とされています。
事業継続力強化計画の変更申請を行う場合には大きく2つの事由が存在し、「設備等導入に伴う変更」と「感染症対策の追加」です。
設備等導入に伴う変更
実際に変更申請を行うケースとして多いと考えられるものが「事業継続力強化設備等の追加」または「事業継続力強化設備等の変更」でしょう。
事業継続力強化計画の認定を受けると税制優遇を受けることができるというメリットがあります。
この制度は、中小企業防災・減災投資促進税制と呼ばれ、「事業継続力強化計画に記載された対象設備を適用対象期間内に新たに取得する場合に、20%特別償却の税制措置を受けることができる」というもので、自然災害への防災対策設備は比較的高額となりやすいため、導入設備の規模によっては非常に大きな節税効果を得ることが可能となっています。
この税制優遇を受けるためには、認定を受けた事業継続力強化計画に導入設備等の詳細が記載されている必要があります。事業継続力強化計画の申請段階では設備導入は考えていなかったが、その後に状況が変化し、防災等の設備を導入することになり、税制優遇を活用するようであれば、事業継続力強化計画の変更申請を行い、改めて認定を受ける必要があります。
また、税制優遇を受けるためには事業継続力強化計画に導入予定の設備等をメーカーや型番・金額・設置場所など、かなり具体的に記載する必要があります。記載した通りの設備導入が税制優遇を受ける要件となっていますので、導入する設備の変更(メーカーや型番の変更、金額の変更など)が伴う場合にも変更申請を行う必要があります。
出所:事業継続力強化計画策定の手引き(令和3年3月9日版)
出所:事業継続力強化計画策定の手引き(令和3年3月9日版)
税制優遇制度については、こちらで詳しく紹介しています。
感染症等追加による変更
事業継続力強化計画の認定制度がスタートした当初は、計画の内容におけるリスクの対象は自然災害(地震・水害・台風等)が中心となっていました。
しかし、令和2年4月以降の新型コロナウイルス感染症の流行によって、事業継続力強化計画の支援対象に「感染症等」が含まれるかたちで令和2年10月に法改正が行われました。その結果、現在の事業継続力強化計画の作成においては、対象リスクとして自然災害だけでなく、感染症が加わっています。
感染症対策を含まずに事業継続力強化計画の認定を受けた事業者に関しては、感染症対策の追加が強く推奨されています。
出所:事業継続力強化計画策定の手引き(令和3年3月9日版)
認定を受けた事業継続力強化計画に感染症対策を盛り込む場合、複数個所での追加修正が必要であるため軽微な変更とは言えず、認定を受けた事業継続力強化計画の趣旨をも変えることになりますので、変更申請が必要となります。
変更に係る認定書
事業継続力強化計画の変更申請は、改めて認定を受けるという流れになります。
従って、変更申請後には改めて認定書が交付されます。交付される認定書には、「事業継続力強化計画の変更に係る認定について」と書かれています。通常の認定書の場合には「事業継続力強化計画に係る認定について」となっていますので、「変更」という文字が加えられています。
出所:事業継続力強化計画の変更認定書
変更に必要な書類
事業継続力強化計画の変更申請は、「改めて事業継続力強化計画の認定を受ける」ということになるため、通常の申請時と同じ書類を提出することになります。
変更時には、次の書類が必要になります。
- ①変更申請書(原本)
- ②事業継続力強化計画(変更後)
- ③実施状況報告書
- ④旧事業継続力強化計画認定書の写し
- ⑤旧事業継続力強化計画の写し
- ⑥変更申請用チェックシート
- ⑦返信用封筒
出所:事業継続力強化計画策定の手引き(令和3年3月9日版)
この中で、「④旧事業継続力強化計画認定書の写し」と「⑤旧事業継続力強化計画の写し」はコピーすればそれで準備は完了です。
特に重要となる書類は「事業継続力強化計画(変更後)」と「実施状況報告書」の2点となりますので、説明していきます。
なお、変更申請時に必要となる書類に関しては、中小企業庁の事業継続力強化計画ホームページよりダウンロードすることができます。
認定事業継続力強化計画変更申請様式として、「記入用」「チェックシート」「実施状況報告書」の3つのファイルがありますので、すべてダウンロードしてください。いずれの書類も変更申請時に必要となります。
出所:中小企業庁 事業継続力強化計画サイト
実施状況報告書
正式名称は、事業継続力強化計画に係る実施状況報告書です。
事業継続力強化計画の実施状況について、自らが評価を行い、必要に応じて今後の改善方針などを記載することになります。
デフォルト状態ではA4用紙2ページ分がwordファイルにて提供されます。
出所:事業継続力強化計画に係る実施状況報告書
事業継続力強化計画に係る実施状況報告書の記入方法としては、次のような指示があります。
(注)
「評価」欄は下記の記号をそれぞれ記入することとし、「実施状況」欄にも変更申請時点の状況について記載すること。特に、評価を△若しくは×とした場合は、当該評価に至った理由及び今後の改善方針を、-(未着手)の場合は、着手予定時期を記載すること。
ただし、認定された事業継続力強化計画に記載した項目のみ、本書にも記載すれば良い。評価記号
◎計画通り取り組んでいる
○ほぼ計画通り取り組んでいる
△取り組んでいるが不十分
×ほとんど取り組んでいない
-未着手出所:事業継続力強化計画に係る実施状況報告書
具体的な記入例・記載例は、事業継続力強化計画策定の手引きなどを含め、公開されていません。
そこで、当サイト運営事業者が実際に変更申請を行った際に記述した事業継続力強化計画に係る実施状況報告書の一部を記入例として紹介します。
(当サイト運営事業者は、感染症対策を加えた事業継続力強化計画を新たに作成したうえで事業継続力強化計画の変更申請を行い、改めて認定を受けています)
実施状況報告書の記入例
出所:当社の実施状況報告書より
評価に関しては記号だけを入れればOKです。
実施状況に関しては、計画通りに取り組みができていればその旨を記入すれば大丈夫です。また、取り組みが不十分ということであれば、なぜそうなってしまったのかという理由について触れたうえで、今後の改善方針について記入するようにします。
取り組みが不十分な時の記入例
<小規模企業共済への加入を計画していた場合>
新型コロナウイルス感染症の影響によって、小規模企業共済への加入は保留。ただし、従業員給与として活用できるように外部から資金調達を行い、内部留保済み。小規模企業共済は、月額掛金を慎重に検討し、2021年度中には加入予定。
事業継続力強化計画実施状況報告書では、認定を受けた事業継続力強化計画に対する取り組みを確認し、今後の方針や改善策を検討するという流れになっていますので、いわばPDCAのうちC(check:確認)とA(Action:改善)を促すことにもつながります。
変更申請をきっかけに改めて事業継続力強化計画の運用についても確認できるというのは、良い仕組みであるといえそうです。
なお、特に指示があるわけではありませんが、事業継続力強化計画実施状況報告書の日付については、変更申請日以前としておいた方が良いでしょう。
変更申請書
変更時の申請書は、正式には「認定事業継続力強化計画の変更に係る認定申請書」と言います。
ダウンロードすると、A4用紙サイズ6枚のWordファイルとなっており、基本的には表紙が異なるだけで、通常の事業継続力強化計画申請書と計画書部分に関しては同じフォーマットとなっています。
出所:認定事業継続力強化計画の変更に係る認定申請書
変更申請書の記入方法ですが、次のような指示があります。
認定を受けた事業継続力強化計画を修正する形で作成してください。変更・追加部分について変更点が分かりやすいように下線を引いてください。
出所:事業継続力強化計画策定の手引き
具体的には、次のように記入することになります。
<変更計画書の記入例>
出所:当社の事業継続力強化計画(変更後)より
当社では、感染症対策を内容に追加し、変更版の計画書を作成しています。
追加した箇所に関しては、下線(アンダーバー)を引いて示しています。
4.感染症の発生時においても従業員の人命を最優先に、安全と雇用を守る。
このように、追加が生じた場合には指示にあるように下線(アンダーバー)を引くようにしてください。
また、認定を受けた事業継続力強化計画について再確認を行ったところ、いくつかの箇所で誤植を発見したため、そこを修正しています。
誤植は軽微な変更であると考えられることから、事業継続力強化計画の変更申請の要件には当たらないわけですが、せっかく改めて認定を受けるということであれば誤植をなくしておきたいという判断です。
誤植の場合には、文字を消すことで対応しています。
1.自然災害発生時において、従業員と従業員の人命を最優先に守り、さらに、早期の経営安定化を図ることで、従業員の雇用を守る。
記入内容の変更にあたっては、追加と削除の方法さえ分かればすべての変更に対応できると考えられますので、文字消しと下線で示すようにすれば大丈夫です。
事業継続力強化計画の変更作業について
変更申請は、「既に認定を受けた事業継続力強化計画を変更する」という意味合いですから、改めて認定を受けるということであっても、その内容の骨子は認定事業継続力強化計画が前提になっています。
そのため、まずは認定済みの事業継続力強化計画の内容を、「認定事業継続力強化計画の変更に係る認定申請書」にコピー&ペーストします。そして、変更部分に対して追記していくかたちで進めた方がミスはないでしょう。
あまりないとは思いますが、認定を受けた事業継続力強化計画のデータが見当たらない(紛失してしまったようなケース)場合には、まずは認定事業継続力強化計画の内容を改めて入力したうえで、変更を行うことになります。
チェックシート
事業継続力強化計画の申請を受ける際にも提出したチェックシートですが、変更申請時にも提出が必要です。
変更申請時には、「認定事業継続力強化計画の変更について、申請書提出用チェックシート」というタイトルになっており、初めて認定を受ける際のチェックシートとは異なるものであることに注意が必要です。
とはいえ、内容的にはそれほど大きな違いがありません。
「事業継続力強化計画に係る実施状況報告書」の項目が追加されており、2か所チェックする箇所が増えています。
出所:認定事業継続力強化計画の変更について、申請書提出用チェックシート
チェックシートについては、認定を受ける際に提出したチェックシートの内容をコピー&ペーストするのは避けて、改めて内容を確認しながらチェックをしていくことをおすすめします。
例えば、税制優遇を受けることを目的に設備導入を追加する変更申請を行う場合、初めに認定を受ける際に提出したチェックシートには、次の項目は「該当なし」が入れられているはずです。
3-3.税制措置の適用を受ける場合は、事業継続力強化設備等の種類において、導入する設備等の詳細(型式まで)を記載している。確認項目を確認し、チェックをつけている。
しかし、変更申請時には当該項目には「✓(チェック)」が入ることになるため、前回と同じであると考えてコピー&ペーストしてしまうと補正(修正)を指示されることになってしまいます。
他にも、事業継続力強化計画の内容を変更することによってチェックシートのチェックあるいは該当なしが変わるところがいくつか考えられますので、改めて一つ一つをチェックしていくことをおすすめします。
チェックシートの記入例についてはこちらを参考にしてください。
申請方法
事業継続力強化計画の変更申請は、現時点では紙による申請(郵送申請)に限定されています。
令和3年1月27日より、事業継続力強化計画は電子申請システムによる受付が開始されています。しかしながら、既に認定を受けた事業継続力強化計画の変更申請に関しては電子受付に対応していません。
紙での申請(郵送申請)における返信用封筒についてはこちらを参考にしてください。
また、電子申請についてはこちらにまとめてあります。
認定まで
通常の申請(初回申請)と変更申請で何らかの区別がされているという案内はされていません。そのため、変更申請後に改めて認定を受けるまでの期間は45日間(標準処理期間)と考えておけば良いでしょう。
当社の場合、2月2日に受領され、2月16日付けで変更認定がされているため、営業日ではおよそ2週間となっています。これは、標準処理期間45日よりもはるかに短いスピードで認定がされているわけですが、これが変更申請であるから早かったのか、たまたま時期的に早く処理がされたのかという点については良く分かっていません。提出先の経済産業局によっても、認定までのスピードは違いが見られます。
出所:当社の変更申請書
出所:当社の変更認定書
いずれにしても、設備投資を予定している事業者は、変更申請後に45日間は掛かるという前提で準備を行うと良いでしょう。
なお、内容や提出物に不備があるような場合には補正指示による修正対応や、差し戻しによる再申請など、余計な時間が掛かってしまう可能性が高くなります。
事業継続力強化計画の変更申請時には、「実施状況報告書」「事業継続力強化計画(変更後)」「チェックシート」の3点に記入漏れや記入ミスがないかどうかを十分に確認しましょう。また、申請書類の送付時には、「認定事業継続力強化計画の写し」や「返信用封筒」なども忘れないように封入してください。
補正指示への対応はこちらを参考にしてください。
事業継続力強化計画の作成方法はこちらに整理してあります。変更内容の検討にも役立つでしょう。