事業継続力強化計画の認定基準は?審査や難易度・修正指示への対応

事業継続力強化計画

事業継続力強化計画認定制度

中小企業強靭化法に基づく事業継続力強化計画は、経済産業大臣に申請書を提出することで認定を受け、さまざまなメリットを受けることができるという制度です。

申請書を出せば当然に認定されるというものではなく、認定のための「審査」が行われる仕組みとなっています。

申請から認定までの流れ

事業継続力強化計画の申請から認定までの流れ
(画像出所:事業継続力強化計画策定の手引き)

まずは、各事業者が事業継続力強化計画を策定します。

策定した申請書は、経済産業大臣に申請することになりますが、実務上の窓口となるのは、事業継続力強化計画を作成した中小企業者の主たる事務所の所在地を管轄する「経済産業局」となりますので、各経済産業局に申請をすることになります。

各経済産業局において、申請書の審査(確認)が行われ、通常は標準処理期間として45日以内に認定され、認定書が届きます。

認定率はどのくらい?

審査があるということならば、どの程度の申請者が認定されるのか、言い換えれば認定されない割合というのはどの程度なのでしょうか

認定件数は中小企業庁から毎月公開されていますが、申請数や認定率(認定割合)といった数値は公開されていません。したがって、認定率は分からないというのが実態ですが、一つ分かっているのは「要件を満たした申請書であれば問題ない限り認定される」ということです。

もともと、事業継続力強化計画は「やる気認定」と言われており、事業者の事業継続に向けた「やる気(意欲)」を認定する制度という側面が色濃くなっています。

ですから、認定しないという姿勢ではなく、上がってきた申請書については積極的に認定する、という前提なのです。

とはいえ、認定された事業者に対しては法律上のさまざまな特典も用意されていることから、申請されたすべての申請書が無条件で認定されるのではなく、一定の審査(審査という言葉よりも、内容の確認と言った方がより適切とも言えます)が行われていることは事実です。

申請書の内容によっては、審査のうえ修正を求められることもありますので、具体的にどのようなことが審査されているのか、何に対して注意すれば良いのかについて紹介していきます。

審査方法

令和2年4月現在において言えることですので、今後、制度の改正が起こることによって変更が伴うことも考えられます。

あくまでも、本記事の執筆時点での参考情報として捉えてください。

申請書を提出すると、提出先の地方経済産業局ごとに審査・確認を行っているようで、審査は書面のみで行われます。面接が行われるようなことはなく、電話やメールによるヒアリングなども存在しません。

ということは、申請書という紙ベースで認定されるか否かが決まりますので、申請書の記載は細部にわたって、慎重に行うことが求められます。

事業継続力強化計画の認定基準

事業継続力強化計画の認定基準は、法律に定めがあります。

実際にどのようなことが書かれているのか、中小企業等経営強化法第五十条について紹介します。

中小企業等経営強化法

第五十条 中小企業者は、事業継続力強化に関する計画(以下この条及び次条において「事業継続力強化計画」という。)を作成し、経済産業省令で定めるところにより、これを経済産業大臣に提出して、その事業継続力強化計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 事業継続力強化計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 事業継続力強化の目標
二 事業継続力強化の内容に関する次に掲げる事項
イ 自然災害等が発生した場合における対応手順
ロ 事業継続力強化設備等(事業継続力強化に特に資する設備、機器又は装置として経済産業省令で定めるものをいう。第五十二条第二項第三号ロにおいて同じ。)の種類
ハ 損害保険契約の締結その他の事業活動を継続するための資金の調達手段の確保に関する事項
ニ 事業継続力強化の実施に協力する地方公共団体、親事業者、政府関係金融機関、商工会、商工会議所、中小企業団体中央会その他の者(以下この号において「協力者」という。)がある場合は、当該協力者の名称及び住所並びにその代表者の氏名並びにその協力の内容
ホ 必要な組織の整備、訓練の実施その他の事業継続力強化の実効性を確保するための取組に関する事項
ヘ イからホまでに掲げるもののほか、事業継続力強化に資する対策及び取組に関する事項
ト その他経済産業省令で定める事項
三 事業継続力強化の実施時期
四 事業継続力強化を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
3 経済産業大臣は、第一項の認定の申請があった場合において、当該申請に係る事業継続力強化計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。
一 前項第一号から第三号までに掲げる事項が基本方針に照らして適切なものであること。
二 前項第二号から第四号までに掲げる事項が事業継続力強化を確実に遂行するために適切なものであること。

この中で、第五十条第3項が認定に関して書かれているところとなります。

申請した事業継続力強化計画の内容が、「基本方針に照らして適切なものであること」および「事業継続力強化を確実に遂行するために適切なものであること」に適合しているかどうか、が認定基準ということになります。

何が確認されているか

防災・減災に取り組む中小企業・小規模事業者がその取組をとりまとめたものが事業継続力強化計画であり、申請書です。したがって、申請書には、事業継続力強化の目的や自然災害等の影響、それを踏まえた今後の取り組みが整理されていることになりますが、ある意味でこれらの内容は「評価」という観点では審査のやりようがないとも言えます。

事業継続力強化計画を策定する事業者は、業種や所在地などの条件において制限は基本的にありません。

そのため、個々の事業者が置かれている状況はさまざまに異なり、たとえ環境などの状況が似ていたとしても、何を重視して分析・対応するのかという視点は個々の事業者に委ねられますから、一つとして同じ分析・取り組み結果になることはありません。

同様に、今後の取り組みについても、実際に行うかどうかを含めていろいろな対応策が検討されるのは当然のことです。

このように、緊急時に向けた対応策というのは、緊急事態が発生した後の結果論として正しさを評価することはできる可能性はありますが、事後ではなく事前において、正しい答えというものは存在しないものといえます。

また、本質的に事業継続力を強化するという観点に立てば、社内における体制整備や従業員に対する教育訓練などの定期的に実際に実行されることが求められますが、今回はそれを行うことの計画を策定するところまでが要求されており、実際にやったかどうかまでは求められていません

自然災害等の発生に備え、対策の入口として普及・機能されていることが期待されているのが事業継続力強化計画ですから、深いレベルまでは要求されていないのです。

したがって、指示されていることがしっかりと記載されているか、という観点でのチェックが審査の中心になっているようです。

「事業継続力強化計画策定の手引き」の指示に従っているか

事業継続力強化計画の策定バイブルともいえるものが「事業継続力強化計画策定の手引き」です。

中小企業庁のホームページからダウンロードすることができます。

事業継続力強化計画策定の手引き(20200519版)
(出所:事業継続力強化計画策定の手引き(20200519版))
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/keizokuryoku.htm

この手引きは、令和元年7月16日の事業継続力強化計画認定制度開始時に公開されてから、毎月のように変更・更新が行われてきました。最近は落ち着いたようですが、それでも定期的に変更されています。

手引きは非常に丁寧に解説がされており、自力で事業継続力強化計画を策定する事業者でも、順序に従って読み進めながら検討・策定を進めていくことで最終的に申請書を完成できるようになっています。その分、ボリュームも非常に多く、最新版では75頁まであります。

申請書の作成・記載にあたっては、この「手引きの指示に従っているか」、という点を十分に注意していく必要があります。

例えば、申請書(単独型の場合)の出発点ともいえるものに、自社の事業活動の概要があります。どのような事業を営んでいるのかを記載することになりますが、手引きでは、自社が営む事業内容(業種)に加え、自らの事業活動が担う役割についても記載を要求しています。

注意点として目立つ場所に、「業種等に加え、自らの事業活動が担う役割について、サプライチェーンにおける役割または地域経済などにおける役割の記載がない場合、計画書の不備として認定の対象とはなりません。」と記載があります。

審査においては、このような指示にしっかりと従っているか、についての確認が行われているようです。

事業継続力強化計画策定の手引きにある指示文
(出所:事業継続力強化計画策定の手引き(令和2年5月19日版 22ページ))

手引きには「○○を記載してください」というように、極めて親切かつ丁寧に指示がされています。

また、すべての項目において「記載例」が解説されており、記載しなければならないポイントがイメージしやすいようになっています。提出時にはあらためて指示を守っているかどうかを確認してから、申請を行うことが大切です。

審査によって修正が求められる場合

事業継続力強化計画を申請後、各地方経済産業局において審査(申請書のチェック)が行われます。審査のうえ、問題があった場合には各地方経済産業局の担当者より問い合わせ・照会や修正の連絡が入ります。

連絡は、メールや電話によってなされます。

経験上、まずは個別でメールによる案内がなされたうえで、電話により送信メールの内容について説明がされる、というように、二重による確認体制が多くなっています。

メールでは、提出した申請書の不備や誤りが指摘されたり、稀にですが、より良い申請書とするための内容の改善提案を受けたりすることがあります。これらはメール文面で詳細に説明がなされますので、メールをよく読んだうえで対応を行うことになります。

メールで連絡があった場合、修正等の対応を行わない限り、認定されず保留という扱いになってしまうことから、早急な対応が必要です。

事業継続力強化計画の申請時には、申請書データをCD-Rに格納(焼いて)して送付する必要がありますが、修正の場合には修正データは「メールによる送付」で受理されることがほとんどです。

【追記20200615】
事業継続力強化計画策定の手引きが令和2年6月15日に改定され、その中で「CD-Rの提出が不要」と変更されました。これにより、今後は申請書は紙ベースのみの送付となり、データの送付は行なわずに済むようになりました。
この結果、修正指示を受けて申請書を変更した場合、従来の電子メールでの送付とは異なる対応が求められる可能性があります。その場合であっても、指示に従えば問題ありません。
その他変更内容についてはこちらをご覧ください。
CD-Rは不要!事業継続力強化計画申請時の提出書類が変更(令和2年6月15日)

ただし、申請書の押印漏れや、申請時の必須提出物であるチェックシートの提出漏れ、など申請そのものの書類不備に関しては、申請書の原本やCD-Rの再提出が求められることも考えられます。

修正の連絡があった場合には、焦らずにメールの指示に従って修正のうえ、再提出を行うようにしてください。

内容の修正・改善提案について

稀に、記載内容の確認も含めた提案がなされることがあります。

例えば、実現可能性の観点から指摘がされるケース。申請企業の業種から判断して、予定している設備投資の内容がマッチしていないような場合や、従業員数が数人と極めて少数であるのにも関わらず、体制面での整備が複雑になっている場合など、があります。

そもそも、事業継続力強化計画の申請書には申請企業の売上高等の記載の必要性はなく、決算書や申告書の提出も要求されていませんので、申請書からは具体的な企業像までは分かりません。

ただし、業種と従業員数は記載事項となっていますので、およその企業規模のイメージはできるようになっています。

事業継続力強化計画が「やる気を認定する」ものであるとしても、自然災害等に備えた設備投資の中身として、

  • 水を事業にほとんど使うことがないような事業所が汲み上げ用ポンプを購入すること
  • 従業員が1名しかいない会社が不自然に多額の投資を行う

といったものについては、その意気込みは素晴らしいとしても、実効性に欠けるという意味では、審査の時点で内容の照会や見直しの提案を受ける可能性はあるといえます。

このように、書類上の不備や記載上の漏れがなく、指示通りに従ったものであったとしても、審査員(確認者)の目から見て、より実効性を高めるためにアドバイス的な意味で連絡を受けることもある、ということは知っておいた方が良いでしょう。

事業継続力強化計画の認定は、申請から45日後となっていますが、修正等がある場合には認定までの期間が延びてしまう可能性がありますので、提出の際には「指示に従った内容になっているか」という点を十分チェックするようにしてください。

また、申請書と同時に送付するチェックシートは、Excelになっていることもあって、記載漏れなどの不備が多く発生していますので、申請時にはあらためて確認をするようにしてください。

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