「事業継続力強化計画が認定されました」という発信が大切な理由

事業継続力強化計画

事業継続力強化計画の認定状況について

事業継続力強化計画の認定制度は、中小企業強靭化法の施行日である、令和元年7月16日より開始されています。

事業継続力強化計画の制度開始後、認定件数(認定企業・事業所数)はどのようになっているのでしょうか

結論から言うと、事業継続力強化計画の認定件数はそれほど伸びていないのが現状です。

事業継続力強化計画より3年ほど前から制度が開始されたものとして、経営力向上計画があります。

経営力向上計画は、中小企業・小規模事業者が、経営力向上のための人材育成や財務管理、設備投資などの取り組みをとりまとめた経営力向上計画を申請し、認定されることで中小企業経営強化税制(即時償却等)や各種金融支援が受けられるという制度です。

経営力向上計画の認定制度は、中小企業等経営強化法が施行された3年前の平成28年7月1日よりスタートしていることから、経営力向上計画と事業継続力強化計画は、制度開始日が7月と同時期であるため、認定数を比較してみます。

中小企業庁によると、経営力向上計画は制度が開始されてから5か月後の平成28年12月末時点で10,101件に達したと発表しています。

一方、事業継続力強化計画の認定件数は、中小企業庁の発表によると、制度開始から4か月半後となる令和元年12月末時点で4,171件となっています。

図表:事業継続力強化計画の認定件数(令和元年)
出所:中小企業庁

両制度の趣旨・目的は異なるものの、対象となる企業・事業者数はほぼ同じです。むしろ、事業継続力強化計画の方が対象者数は多いと考えることができますので、同時期の認定件数を比較して「2倍」の差がみられるというのは、少ない差ではないということを指摘できるといえます。

「事業継続力強化計画が認定されました」と情報発信する意義

新型コロナウイルス感染症のように、予測もできなかった急激な社会変化が経営にもたらすインパクトは甚大で、その結果として、企業・事業者の事業継続が社会に与える影響も極めて大きなものとなっています。

事業継続力強化計画の必要性が高まる中にあっては、認定を受けた企業・事業者が「事業継続力強化計画が認定されました」という情報発信を行うことが有効です。これによって、少なくても3つの効果を期待することができます。

1.認定企業・事業所のブランディング

事業活動を行ううえで、「信頼性」は非常に重要な要素です。

例えば、内容も価格も似ている商品やサービスを扱っている企業が2つあった場合、顧客は信頼できる企業の方から購入するでしょう。

価格差がある場合にはどうでしょうか。
A社とB社が似た商品を販売しており、A社の方が価格は少し高いもののB社よりも信頼性が高いならば、A社から買う顧客の方が多いはずです。このように、信頼は価格以上に重視されることが珍しくありません。

特に、最近はその傾向が顕著にみられるようになってきているのは、消費者の立場になってみると納得できるといえます。

企業努力によって低価格化を志向するよりも、信頼性を高めることの方が顧客にとって歓迎されるような事例はたくさんあるのです。

信頼性を高める方法はいくつも存在しますが、事業継続力強化計画の認定をアピールすることも信頼性向上において有用です。

事業継続についての能力強化を図るという取り組みは、自分たちの事業に対して責任をもって遂行することを意志表示するものでもあり、顧客や取引先に対して安心を提供する行為に他なりません。

そのため、企業価値を向上させ、結果的に信頼を高める効果を期待することができるのです。既存顧客に対してはロイヤリティを高め、新規顧客に対してはアプローチしやすい状況を作り出すことができます。

国(経済産業大臣)から事業継続力強化計画の認定を受けたという事実を、対外的に発信することは、ブランディング活動の一環として、経営上有利に働くことになります。

2.事業継続力強化計画に対する評価向上

制度が開始された早くから事業継続力強化計画を策定し、認定を受けた企業・事業者は、経営に対して嗅覚の鋭さという高い感度を有しているといえます。

このような企業・事業者はいわゆる「オピニオンリーダー」や「インフルエンサー」といった役割を持つ傾向にあり、周りに対して影響力を持つことが多いという特徴があります。

中小企業庁でも、事業継続力強化計画の認定を受けた企業を公表していますが、加えて、オピニオンリーダーやインフルエンサーとなり得る、早い段階で認定を受けた企業がその取り組みを情報発信することを行えば、広く社会に対して事業継続力強化計画の認知度を向上させることができます。

オピニオンリーダーやインフルエンサーから影響を受けた企業が、追随するように事業継続力強化計画の認定を受けることで、社会に対してその取り組みが広がりを見せ、結果的に事業継続力強化計画策定・認定という行動に対する評価は高まっていくことになります。

事業継続力強化計画の策定・認定が社会的(顧客はもちろん、取引先やステークホルダー、行政など)に評価されるという風潮ができれば、自発的に事業継続力強化計画の認定を受けたいという企業も増えてくるはずです。

このような流れは、いわば「事業継続の取り組みが循環していく」という仕組みを作ることができるという点で、非常に大切でしょう。

自社のみならず、他社が事業継続について能力強化を図ることは、自社にとっても有益なことであり、サプライチェーンにおいては特にそのようなことが言えるはずです。

3.緊急時における社会への影響低減

事業継続力強化計画の認定件数が増えれば、最終的には我が国の経済(社会)が強くなるということを意味しています。

さまざまな企業同士が密接に結びつくことによって付加価値の高い事業活動を実現している我が国においては、事業継続というのは経営上、保守的なものではなく、攻めの経営戦略ともいえるものです。

1社でも多くの企業・事業者が事業継続力強化計画に関心を持ち、認定を受けることは、緊急時に当該企業の事業継続を通じて社会そのものを守るという点で、重要な意味を持ちます。

ただし、これは緊急事態が起こった後の結果論としての効果や価値であるため、イメージしにくいというのも事実ですが、過去のデータから事業継続への取り組みが事業再建・地域活性化に好影響を与えたということは客観的に説明できることです。

手軽に「事業継続力強化計画が認定されました」と発信していく

近年、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の広がりを含め、インターネットの活用により、情報発信は手軽にできるようになってきています。

既に事業継続力強化計画の認定を受けた企業・事業者は、オピニオンリーダーやインフルエンサーとしての役割を担うことが普段においても多いのではないでしょうか。

自社のブランディング活動の一環として、「事業継続力強化計画が認定されました」と情報発信してみたらいかがでしょうか。

このような情報発信活動に力を入れている企業は増加しており、素晴らしい取り組みであると考えられます。

検索エンジンのGoogleで「事業継続力強化計画」と検索すると、関連する検索キーワードとして次のようなものが表示されています。
(表示は2020年6月3日時点のもので、検索する場所や端末によって変わることがあります)

Googleによる事業継続力強化計画の関連検索キーワード一覧

ここには、「事業継続力強化計画 認定されました」が出現しています。

どのような意図で検索しているのかについて詳細は分かりませんが、事業継続力強化計画の認定を受けた企業・事業所を知りたいという検索ニーズは比較的多く存在するようです。

これは、既に多くの企業が「当社の事業継続力強化計画が認定されました」という情報発信を行っていることも影響しているものと考えられます。

今後の認定件数の動き

中小企業庁によると、経営力向上計画は令和元年12月末まで(制度開始からおよそ2年半)で99,277件の認定数となっています。

事業継続力強化計画についても、今後は新型コロナウイルス感染症対策としての機能も担うことができるため、認定件数が加速度的に増加する可能性があります。

それでも、まだまだ事業継続力強化計画の認知度が低い、あるいは、事業者の事業継続に対する意識が低いということが指摘できるのではないでしょうか。

今後、事業継続力強化計画の評価が社会的に高まれば、早くからそれに目を付け、認定を受けるに至ったという事実は、大きなアピールポイントであるともいえます。

もちろん、これから認定を受ける企業・事業者であっても、認定した事実を積極的にPRしていくことを通じて、結果的に自社に利益をもたらすことになるはずです。

※令和2年6月15日追記「認定事業者名の公表について」
事業継続力強化計画および連携事業継続力強化計画の認定を受けた事業者は、中小企業庁のホームページにて事業者名の公表をすることが選択できました。
しかし、令和2年6月15日付けで事業継続力強化計画策定の手引きが改訂され、「中小企業庁のホームページにて認定を受けた事業者名を公表することが前提」へと変更されました。従来のように、公表するかどうかを選択することはできず、非公表を選ぶことができなくなりました。
これは、公表にすることで事業者が被るリスクはないということ、また、公表と非公表の選択制にて運用した結果、非公表を選択した事業者が極めて少なかったという実績を受けたものと考えることができます。
認定を受けた事業者名がいろいろなところで公表されていくのは、事業継続力強化計画の価値を高めるうえで良いことだと言えます。

その他の変更点についても確認しておくことをおすすめします。

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