事業拠点が複数ある場合の事業継続力強化計画の作成について

事業継続力強化計画

いくつかの事業を行っている中小企業では、事業ごとに支店や工場などの拠点を有している場合も多く存在します。

また、単一の事業活動を行っている場合でも、事務所と工場が異なる場所に存在することや、各地に支店を有することもあるでしょう。

複数の事業拠点がある場合、事業継続力強化計画の策定・作成においては、どのようにすれば良いのでしょうか。

結論から言えば、複数の拠点がある場合には、原則として、「自然災害のリスクと影響が最も高い拠点」に絞り込んで事業継続力強化計画の策定・作成を行えば大丈夫です。

事業継続力強化計画における事業拠点の考え方

事業継続力強化計画策定の手引きでは、事業活動に影響を与える自然災害等の想定を行う際に、次のような記載がされています。

事業継続力強化計画策定の手引きにおける事業拠点についての記載
出所:事業継続力強化計画策定の手引き(令和3年6月16日版)

自社の拠点のうち、事業活動を継続するにあたって必要な拠点について、事業活動に影響を与える自然災害等を1つ以上想定します。

出所:事業継続力強化計画策定の手引き(令和3年6月16日版)

③ 複数の拠点を持つ場合、個々の拠点ごとの詳細な被害想定までは不要です。

出所:事業継続力強化計画策定の手引き(令和3年6月16日版)

これらの解説(指示)で分かることは、事業継続力強化計画の策定・作成においては、複数の拠点を持つ中業企業であっても、「事業活動に影響を与える自然災害等の想定と被害想定を行うのは1つの拠点のみで問題ない」、ということです。

したがって、複数の拠点がある場合には、自社にとって重要性の高い拠点を1つピックアップし、当該拠点についての検討を進めていくことになります。

事業拠点の絞り込み方

事業継続力強化計画策定の手引きには、複数の事業拠点がある場合の絞り込み方について、細かく解説されている箇所はありません。

そこで、事業継続力強化計画作成指針を参考にすることができます。

事業継続力強化計画作成指針とは、「事業継続力強化計画及び連携事業継続力強化計画の適確な作成に資するため、計画の作成に当たっては、以下の事項を検討するものとする。」という書き出しから始まるもので、事業継続力強化計画の策定・作成に関して迷った場合には、方向性を明確にするものとして役立つものです。

事業継続力強化計画作成指針(令和3年6月16日更新)
事業継続力強化計画作成指針(令和3年6月16日更新)

事業拠点に関して、次のような記載がされています。

第1 

ハ 事業活動に影響を与える自然災害等の想定については、所在地、業種・業態、規模によって様々であり、複数の拠点を有する場合には、拠点ごとにも異なるため、事業活動に影響を与える自然災害等を網羅的に想定することは、困難であると考えられる。
そのため、事業活動に影響を与えるあらゆる自然災害等を想定した事業継続力強化のみならず、当面影響が懸念される特定の自然災害等に焦点を当てた事業継続力強化も有効である。
したがって、事業活動に影響を与える自然災害等の想定については、中小企業者が事業活動を継続するに当たって必要な拠点ごとに、地方公共団体が提供するハザードマップや国が提供する全国地震動予測地図等を確認するとともに、過去の自然災害等の発生状況も考慮し、想定される自然災害等のうち、中小企業者の事業活動に甚大な影響を与える可能性が高い自然災害等を検討した上で、一つ以上の自然災害等の想定を記載するものとする。

出所:事業継続力強化計画作成指針(令和3年6月16日更新)

まず、複数拠点があるのにも関わらず、1つに絞り込んで事業継続に関する検討を進めることについて、それも十分に有効であるという説明がされています。

確かに、ただでさえ経営資源が限られ、資金的にも時間的にも余裕がない中小企業が、すべての拠点について想定されるあらゆる自然災害等の事前対策を行うのは現実的ではありません。あれもこれもということになれば、結果的に何も対策されずにただ計画を作成しただけで終わってしまうという可能性が高くなります。

それならば、特に影響が大きいと予想させる自然災害等に絞り込んで事前対策を行った方が有効性は高いといえるでしょう。

これは、拠点に関しても同じで、すべての拠点を守るということよりも、特に災害発生の可能性が高い拠点に絞り込んで事前対策を行うことが重要になります。

結果的に、拠点の絞り込み方(1つに特定する方法)については、それぞれの拠点ごとに自然災害等の発生リスクを把握し、自社の事業活動に対して最も大きな影響を及ぼす拠点を決定することになります。

具体例

例えば、A拠点とB拠点を有している事業者が事業継続力強化計画の策定・作成を行う場合を考えてみます。

事業継続力強化計画には、1つの拠点に絞り込んで、自然災害等のリスクや発生時の影響および事前対策について検討を進めていくことになるため、A拠点かB拠点のどちらにするのかを決めなくてはなりません。

そこで、まずはA拠点およびB拠点それぞれについて、どのような自然災害等のリスクがあるのかをハザードマップによって把握します。

ケース1

A拠点においては洪水の危険性はないものの今後30年以内に地震の発生確率が極めて高く、B拠点においては洪水の危険性はないものの今後30年以内に地震の発生確率が中程度であった場合を考えてみます。

この場合には、今後の事業活動において大きな影響を与える可能性が高いのはA拠点における地震であると考えられることから、事業継続力強化計画はA拠点に絞り込んで策定・作成していくのが適切であると言えるでしょう。

ケース2

A拠点においては洪水の危険性はないものの今後30年以内に地震発生のリスクが極めて高く、B拠点においては今後30年以内に地震発生のリスクが中程度であるものの洪水の危険性が極めて高い場合を考えてみます。

この場合には、A拠点は地震災害、B拠点は水害の危険がいずれも高いことから、自然災害の発生確率だけで事業拠点を絞り込むのは困難です。

そこで、A拠点で地震が発生した場合にどの程度の被害が想定されるか、B拠点で水害が発生した場合にどの程度の被害が想定されるのか、事業継続に与える影響の大きさを検討したうえで、より影響の大きい拠点に絞り込むのが適切であると考えられます。

留意点

ケース1の場合でも、本来は被害想定まで行うことでより有効性の高い事業継続力強化計画を策定・作成することができると言えます。

複数の拠点を持つ場合、拠点ごとの役割は同一とは言えないことが多くあります。例えばA拠点は常駐する社員の数が少なく倉庫代わりに使っており、B拠点は多数の社員が常駐し大型のサーバーが設置してある、ということになれば、ケースの1のように単純にA拠点が地震の発生確率が高いので優先的に地震発生時の事前対策を行うことが好ましい、とは言い切れません。

地震の発生確率は低いもののひとたび地震が来れば大きな影響が想定されるB拠点を優先して事業継続力強化を図ることの方が重要であるという考え方もできます。

したがって、自然災害等の発生確率だけで優先的に対策を行う事業拠点を決めるのではなく、災害発生時に事業活動に与える影響の大きさも踏まえて考えるのがベストであると言えるのです。

とはいえ、そこには明確な決まりがあるわけではなく、また、判断する人がどこに重きを置くのかによって拠点の優先順位は変わってくるはずです。それを含めて自社でしっかりと検討を行うことで、事業継続力強化を図ることができるといっても良いでしょう。

フリーランスなどの場合

カフェなどで仕事を行い、特定の拠点が存在しないフリーランスの場合には、自宅が事務所という前提であることが多いので、自宅を事業拠点として考えると良いでしょう。

また、特定の場所(企業など)に常駐して業務を請け負うフリーランスの場合には、常駐先にいることがほとんどであると考えられるため常駐先を事業拠点として考えると良いと言えます。

ただし、事前対策については、例えば建物の耐震補強を行うといったことは実現可能性に乏しいため、自分ができる範囲の対策を検討する必要があります。

当サイトでは、事業継続力強化計画を自社で作るための方法を紹介しています。これから事業継続力強化計画を策定・作成するのであれば参考にしてください。

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