事業継続力計画の策定において自然災害リスクをハザードマップで確認する方法
事業継続力強化計画の策定においては、自社の災害リスクを把握・確認することが内容の中に組み込まれています。
災害リスク(特に、自然災害に関するもの)を把握する方法として、ハザードマップの活用があります。ハザードマップによる自然災害の把握方法にはいくつかの方法がありますが、ここでは事業継続力強化計画の策定を行ううえで活用しやすい、インターネット上で自社拠点の自然災害リスクを把握する方法を紹介します。
ちなみに、中小企業・小規模事業者のうち、自社拠点のハザードマップを過去に確認したことのある事業者の割合はどのくらいだと思いますか?従業員数別のハザードマップを見たことがある企業の割合についても紹介していきます。
災害リスクの種類
事業活動を行ううえで、リスク(リスクの定義にはさまざまなものがありますが、ここでは、リスクを「事前に想定できる好ましくないこと」とします)にはいろいろなものがあります。その中でも自社でコントロールしにくく、かつ、発生確率の高いものに「自然災害によるリスク」があります。
自然災害と一口に言っても、さまざまなものがあります。
中小企業白書によると、中小企業の経営者は「地震」に関して、その発生を懸念していることが伺えます。
出所:中小企業白書2019、中小企業庁
「地震」以外では、「豪雨・洪水」、「台風・高潮」が比較的多くなっており、実際の自然災害として近年の発生率が高まっているものが上位となっています。
自社の拠点(事務所や工場)における自然災害リスクについては、最低でも多くの経営者が懸念している「地震」、「水災(洪水)」の2つは確認しておいた方が良いということになります。
ハザードマップで水災のリスクを確認する方法
自社拠点の市町村など地方自治体が公開しているさまざまなハザードマップを見ることで、自然災害リスクを把握することができます。しかし、インターネット上では公開された資料が見つけられないことや、市街地の外れに自社拠点がある場合などは、当該市町村が公開するハザードマップに記載がない(エリア対象外)ということもあります。
そこで、全国各地の災害リスクを網羅的に調べることができる「ハザードマップポータルサイト」を利用するのが便利です。誰でも無料で使うことができ、特に会員登録などの面倒な作業は必要ありません。
ハザードマップポータルサイトを活用する
ハザードマップポータルサイトは、国土交通省が提供するもので、自社拠点の水災に関する災害リスクの情報を調べる方法を説明します。洪水や津波に関するリスク以外にも、土砂災害に関するリスクについても調べることができます。
1.サイトに行く
まず、ハザードマップポータルサイトへアクセスします。
リンク:ハザードマップポータルサイト
ハザードマップポータルサイトは、大きく2つの情報を調べることができるようになっています。
「重ねるハザードマップ」では、任意の場所における災害リスク情報を、地図に重ねて表示することができます。直感的に災害リスクを把握するのに役立ちます。
「わがまちハザードマップ」では、任意の場所のハザードマップを入手することができます。地域ごとに危険性の高い災害においての情報を入手することができる場合があります。
2.重ねるハザードマップ
地図上にハザード情報を表示することができます。
① 場所の入力
場所を入力のところに、自社拠点の住所(所在地)を入力し「Enter」キーを押す(虫眼鏡ボタンをクリック)。
② 災害を選択
自社拠点が中央に表示されていることを確認します。
表示する情報を選びます。まず、洪水情報を選択してみました。洪水の危険性がある場所は、色による表示がされるようになりました。
今回、東京タワー(東京都港区芝公園4丁目2−8)をモデルとして、災害リスクを把握していますが、洪水のリスクは小さいと言えます。
③ 重ねて表示する
その状態のまま、他の災害リスクも重ねて表示することができます。今回、土砂災害情報を選択してみました。
近くの場所で、土砂災害リスクが表示されました。
表示された災害箇所(カラー箇所)をクリックしてみると、「土砂災害の危険性:急傾斜地の崩壊特別警戒区域(指定済)(傾斜度が三十度以上である土地が崩壊する自然現象)」と詳細な情報が表示されました。
3.わがまちハザードマップ
重ねるハザードマップを表示したまま、地域のハザードマップを入手することができます。
右上のアイコンを選択すると、「ハザードマップを見る場所を左クリックしてください」というカーソルが現れますので、任意の場所で左クリックします。
すると、当該地域のハザードマップが表示されます。
地域ごとに準備されているハザードマップが表示されることがあります。今回(東京都港区)では、洪水ハザードマップ、内水ハザードマップ・津波ハザードマップ・土砂災害ハザードマップ、が公開されていることが分かります。
なお、わが町ハザードマップは、ハザードマップポータルサイトのトップ画面からも任意の住所を選ぶことで、当該地域のハザードマップ情報が表示されるようになっています。
地震のリスクを確認する方法
地震は、J-SHIS(地震ハザードステーション)でリスクを把握することができます。J-SHIS地震ハザードステーションは、防災科学技術研究所により運用されているサイトで、信頼さるデータを提供するものとして、広く活用されています。
誰でも無料で使うことができ、会員登録などは必要ありません。
ただし、J-SHIS地震ハザードステーションは専門家でも活用できるよう、非常にさまざまな使い方ができるようになっており、一見すると扱いが難しい印象を受けることがあります。そこで、今回は任意の場所における地震予想を簡単に行う方法について紹介します。
サイトに行く
J-SHIS地震ハザードステーションのトップ画面に行ったら、「スタートボタン」をクリックします。
地震予想の把握
1.住所の入力
左上にある検索ボックスに住所を入力し、「場所を検索」をクリックします。
左下に「検索結果」が表示されますので、選択してクリックします。
左下の検索結果に、希望する住所地が表示されない場合には、住所の入力内容を少し変える(例えば、正確な住所に「大字」が入る場合でも、入力の際には大字を除く)か、あるいは、地番を変える(1000番地1の場合、1000番地としてみる)などを試してみてください。
完全に自社と同じ住所が表示されなくても、近い住所が表示されればそれで問題ありませんので、クリックします。
自社の住所を中心に、地震予想が色によって表示されます。
2.詳細な情報表示
自社の場所(通常は青丸によって表示されています)をクリックします。すると、左下に地震に関する詳細な情報が表示されます。
J-SHIS地震ハザードステーションでは、さまざまな情報を表示することができるのですが、自社拠点の地震を想定するという意味では、この操作によって表示される情報で十分です。
2011年3月に起きた東日本大震災では、東京都では震度5強が観測されていますので、ここ30年以内では東日本大震災を上回る地震が起こることが想定される、ということです。
当時の記憶をお持ちの経営者であれば、東日本大震災以上の震度の地震が発生するということに対して、危機感を覚える方も多いのではないでしょうか。
自社の拠点における地震予想を数値で具体的に知ることは、インパクトのある事なのかもしれません。

ハザードマップの確認状況
中小企業・小規模事業者においては、ハザードマップによる自然災害の把握は、どの程度行われているのでしょうか。
中小企業白書によると、従業員数が多くなるほど自社の地域のハザードマップを見たことがある企業の割合が増加していることが分かります。
出所:中小企業白書2019、中小企業庁
とはいえ、100人以上の企業であっても50%程度であり、それほど高い数値であるとはいえません。
この数値は、半数以上の中小企業・小規模事業者は、自社拠点の自然災害リスクにどのようなものがあるのか、それはどの程度の確率(想定)で起こるのかを知らない、ということを示しています。
事業継続力強化計画を策定するかどうかは別として、最低でも自社拠点のハザードマップは把握・確認しておくことが、経営者には求められるのではないでしょうか。
ハザードマップと災害対策との関連性
中小企業白書では、ハザードマップを見たことのある企業の方が、見たことのない企業と比べて、自然災害に対する備えの取り組みが進んでいることを取り上げています。
出所:中小企業白書2019、中小企業庁
これだけの情報では、ハザードマップを見たから自然災害への取り組みを行ったのか、自然災害への対策を行うためにハザードマップを見たのか、という関係性は分かりません。
とはいえ、ハザードマップと自然災害への対策が密接に結びついているということは言えそうです。
事業継続力強化計画の策定時において、自社拠点のハザードマップを確認することは、今までは知らなかった自社拠点の自然リスクを把握するとともに、あらためて自然災害への対策意識を高めるという意味でも重要だといえます。
事業継続力強化計画の認定を受ける
ハザードマップの確認を入口として、事業継続力強化計画を作成し、国から認定を受けている事業者がたくさん存在します。
せっかくの機会ですから、事業継続力強化計画の認定を受けてみませんか。
当サイトでは、初めて事業継続力強化計画の作成・策定を行う事業者に向けて、2日間で認定を受けるためのノウハウを紹介しています。