事業継続力強化計画の支援対象に感染症が追加!強靭化法改正

事業継続力強化計画

令和元年7月16日に中小企業強靭化法(中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律)が施行され、事業継続力強化計画の認定制度がスタートしました。

事業継続力強化計画認定制度は、中小企業が防災・減災に対する取り組みを取りまとめたものを国(経済産業大臣)が認定する制度です。令和元年7月16日の制度開始から1年後となる令和二年6月末時点において認定事業者数は1万件を突破し、以降も順調に認定数は増加傾向にあります。

今回、法改正が行われ、事業継続力強化計画の支援対象に新型コロナウイルスなどの感染症およびサイバー攻撃が追加されました。

事業継続力強化計画認定制度開始後の環境変化

事業継続力強化計画の認定制度がスタートしてからまだ1年ですが、この1年間には大きな出来事が2つありました。

1つは、令和元年度の台風19号(令和元年東日本台風)による甚大な被害です。100年に1度ともいわれる記録的な大雨によって、関東甲信越地方・東北地方に大きな被害をもたらしました。北陸新幹線の車両基地が水に浸かっている光景は、記憶に新しいところです。

もう一つは、新型コロナウイルス感染症の拡大です。我が国では、2020年に入ってから感染が拡大し、4月には緊急事態宣言が発令されました。その後は、感染者の減少と増加を繰り返しており、いまだ終息の気配は感じられません。また、世界に目を向けてみれば、まだまだ感染者は増加しています。

特に、新型コロナウイルス感染症に対しては、事業者にとって、自然災害とは大きく異なることがありました。

  • 感染症についてほとんどの事業者が未経験であり、対応や対策の知識がない
  • 対策方法が分かっても、必要な物資が品薄で入手できない

現在の新型コロナウイルス感染症への対応はもちろん、今後、新たに発生すると想定される感染症への事前対策は事業者が事業を継続するうえで非常に重要であるといえます。

このような背景もあって、中小企業強靭化法(事業継続力強化計画)が改正され、令和二年10月からは新たな内容に変更されています。

改正のポイント

大きく2つの変更がされています。

1.感染症を支援対策に追加
2.独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う取組が追加

事業継続力強化計画(中小企業強靭化法)の改正ポイント
出所:事業継続力強化計画認定制度の概要(令和元年7月16日施行)、令和2年10月5日、中小企業庁経営安定対策室

1.感染症を支援対策に追加

中小企業等の経営強化に関する基本方針において、次のように改正がされています。

改正前:
事業活動に影響を与える自然災害等のリスクとして、暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象に直接又は間接に起因するリスクが想定される。中小企業者には、地方公共団体が提供するハザードマップや国が提供する全国地震動予測地図等を活用し、自らの事業環境をめぐる自然災害のリスクを認識し、当該リスクを踏まえた事業活動に与える影響を想定することが求められる。そのため、中小企業者の事業継続力強化については、右に掲げる自然災害のリスクを踏まえた事前対策を実施する取組を支援対象とする。

改正後
事業活動に影響を与える自然災害等のリスクとして、暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑り、サイバー攻撃、感染症その他の異常な現象に直接又は間接に起因するリスクが想定される。中小企業者には、地方公共団体が提供するハザードマップや国が提供する全国地震動予測地図等を活用し、自らの事業環境をめぐる自然災害等のリスクを認識し、当該リスクを踏まえた事業活動に与える影響を想定することが求められる。そのため、中小企業者の事業継続力強化については、自然災害等のリスクを踏まえた事前対策を実施する取組を支援対象とする。

従来は、「暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑り」といった自然災害のリスクが支援対象であり、感染症は想定リスクには該当していたものの、支援対象には含まれていませんでした。

改正により、「サイバー攻撃、感染症」が支援対象に追加されています。これによって、サイバー攻撃や感染症に関する取り組みに対しても、融資や信用保険等の支援を受けることができるようになります。

新型コロナウイルスの感染拡大によって「感染症」が支援対象に追加されたものといえますが、「サイバー攻撃」といったITリスクも追加されたことは注目できそうです。

独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う取組が追加

改正では、関係者の取組として次の内容が追加されています。

独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う、中小企業者のリスク認識に向けた注意喚起、事業継続力強化計画の策定促進に向けた普及啓発、事業継続力強化計画の策定に関する指導・助言、事業継続力強化に関する支援人材の育成等

新型コロナウイルス感染症への対応も含め、独立行政法人中小企業基盤整備機構によるさまざまな取り組みが全国各地で開催されていくことを期待することができます。

事業継続力強化計画の修正について

既に事業継続力強化計画の認定を受けている事業者の中には、感染症対策についての内容を盛り込んでいない事業者も多く存在するはずです。

今回の改正を受けて、事業継続力強化計画の内容に「感染症等」への対策を追加したい場合には、認定済みの事業継続力強化計画を変更申請することが可能です。

事業継続力強化計画策定の手引きでは、事業継続力強化計画で想定するリスクに関しては、感染症等を加えて検討することを推奨しています。

認定事業継続力強化計画を持つ事業者は感染症対策を追加しよう
出所:事業継続力強化計画策定の手引き(令和3年4月22日版)

認定事業継続力強化計画に感染症対策を追加する方法についてはこちらで紹介しています。

関連記事一覧

カテゴリー

アーカイブ