事業継続力強化計画のセミナーとワークショップの違い
ワークショップへの参加で事業継続力を強化できる
事業継続力強化計画に関する勉強会が全国各地で実施されています。
セミナーは90分から120分で実施されるものが多く、事業継続力強化計画に関する情報を得たい場合に向いています。ワークショップは、半日程度の時間(3時間~4時間)で実施され、事業継続力強化計画を実際に策定することができます。
結論から言えば、事業継続力強化計画に関するセミナーやワークショップにおいては、ワークショップ(グループワーク有り)への参加、または実施がおすすめです。
セミナーとワークショップの一般的な違い
ビジネス(経営)に関する学びの場としては、セミナーとワークショップの2つが主流で、全国各地で開催されています。
まず、一般的なセミナーとワークショップの違いについて解説します。
正直言って、セミナーとワークショップは、主催者にとってのテーマ・タイトルの一部や開催区分として柔軟に活用されているのが実態であり、両者に明確な定義が存在するわけではありません。とはいえ、一般的には、学びのレベルによる使い分けがなされていることが多いという点を指摘することができます。
具体的には、セミナーの場合には知識を得る(教える)ことが目的、ワークショップの場合には何らかの成果物を獲得する(提供する)ことが目的となります。
1. セミナー
セミナーは、知識習得がベースとなることから、時間は2時間程度の短時間で開催されることが一般的です。
1回で完結する単発型と呼ばれるものが主流ですが、内容的に広範囲に及ぶテーマの場合、複数回で実施されるシリーズ型と呼ばれるものがあります。セミナーでは、専門的な知識を有する講師から知識や情報の提供がされることがメインですから、大学等の講義を受けている感覚と同じイメージです。
「講師からの一方的な知識提供がなされる」と聞くと、なんだかデメリットのように思えますが、流れが無駄に中断されることなく、スムーズに専門的な知識を習得できるというメリットがあります。
講義の終了時には全体を通して質問を行うことができるケースが多く、終了後には講師に直接質問を行うことができる場合もあります。
一通りの知識を習得することが目的となりますので、個別の疑問や質問などに対して丁寧に答える、解決する場というものはセミナーでは準備されていません。これを補完するために、セミナーの開催後に個別で相談できる場(個別相談会)が用意されることがあります。
2. ワークショップ
ワークショップは、知識習得に加えて、成果物を獲得するためのワーク(体験)が組み込まれています。
そのため、長時間に及ぶものが大半で、短くて半日程度、長いものになると3日間や5日間にわたって行われるものも珍しくありません。長時間に及ぶものは、ワークショップという呼称ではなく「研修」と呼ばれることが多くなります。
研修と言うと、やや堅い(難しい)印象を抱くことがあります。一方、ワークショップと聞くと、もう少し柔らかめの、参加しやすく楽しみながら体験できるような印象があると思いますが、形式や内容にはどちらも大きな差はありません。
ワークショップでは、実際に考えたり書いたりするなど、その場で体験をしながら何らかの成果物を獲得できるようになっています。また、講師との関係は双方向性が強く、ワークの間や休憩時間には直接質問を行うことができます。
グループワークありのワークショップ
講義を受けながら、一人で黙々と作業を行うようなワークショップもあれば、他の参加者とグループを組んで、情報共有・意見交換(グループ内で行う情報共有・意見交換のことをグループワークやグループディスカッションと呼びます)を行いながら進行していくワークショップがあります。
ワークショップは、参加することで実際に成果物を獲得できるという特徴がありますが、最大の醍醐味はグループワーク(グループディスカッション)にあるといえます。
淡々と作業を行うだけであれば、自宅において一人で行うのと大差ありません。
同じ目的を持った人同士が、その場に集い、情報共有や意見交換を行うといったコミュニケーションを通じて、机上の知識だけでなく、現場で使える活きたスキルへと昇華させていく場をワークショップと捉えるならば、グループワークへの参加こそが、大きな魅力だと言えるのです。
事業継続力強化計画に関するセミナーとワークショップ
事業継続力強化計画に関していえば、セミナーは事業継続力強化計画の知識習得がメインとなります。したがって、事業継続の重要性や事業継続力強化計画の制度・策定方法などを知識として身に着けたい場合に向いています。
事業継続や事業継続力強化計画について理解を深めたい人や、事業継続力強化計画の策定を自分一人(自社のみ)で行うことができる人におすすめです。
ワークショップは、知識習得に加え、実際に自社の事業継続力強化計画を策定していくことになります。
自分だけでは事業継続力強化計画の策定に不安がある人や、時間を有効活用してその場で事業継続力強化計画を策定したい場合に向いています。
ワークショップといっても、限られた時間の中で行われますので、その場だけで計画書・申請書が完全な形として完成するわけではありません。しかし、素案として5割~8割方の完成を実現できるように設計されているワークショップが多いでしょう。
グループワークで事業継続力強化を実現
事業継続力強化計画は、計画を策定することが認定の要件にはなっていますが、それ以上に重視されているのは、「事業継続力の強化」にあります。事業継続力は、計画策定を順序通りに行うこととの結果として高められるよう、計画書のフォーマット(構造)自体は工夫されていますが、そのプロセスをより深いレベルで取り組むことを通じて、事業継続力を高めやすくすることができます。
この、深いレベルで取り組む一つの方法として「グループワーク」があります。グループワークにおいては、多様な経験や考え方を有する他者との情報共有・交換を通じて、自分では考えることができなかった気づきやヒントを得ることが可能です。
例えば、「特定の業務に専門的に従事している従業員がケガや病気などで長期的に出社できない場合に備え、どのような事前対策を行うことができるでしょうか」、といった問いかけなど、事業継続力強化計画策定のワークショップでは、さまざまなテーマにおいて、自社の状況を踏まえながら限られた時間の中で考えていくことになります。
「特定の従業員が出社できなくても業務をストップしないように、他の従業員でも当該業務を担えるよう多能工化を図る」といった対応策が出てきたとしましょう。このような、自社にとっての事前対策をグループワークで共有・交換することで、他の人にとっては目からウロコの情報となって吸収されていくこともあるでしょう。
あるいは、似たような課題を抱えている企業が、「当該業務のマニュアルを整備しておき、緊急時にはそれを見ながら他の従業員が業務を担う」といったものや、「当該業務に従事しており退社したOB人材に緊急時に協力してもらえるよう依頼を取り付けておく」といったように、自分では思いもつかなかったアイデアや取り組みを提供してもらうこともできます。双方向の情報発信というのは、発信する側も受信する側も、双方に成長を実感できるというメリットが得られる特徴があります。
本来であれば、それぞれの企業内において、複数の従業員が集まり、意見を出し合いながらブラッシュアップしていき、最終的な内容を事業継続力強化計画として取りまとめることで、その企業における事業継続力を高め、強化することが期待できます。
しかしながら、多くの小規模事業者や中小企業においては、社員が集まって計画策定を行うというような経験も少なく、余裕もないというのが現実でしょう。
結果的に、社長なり代表者が1人で考え、考えた内容を従業員に伝えるという流れが多いといえます。このような状況下においては、余計にグループワークによって得られる学びは極めて重要性の高いものであり、疑似的に社内での検討会を行うのと似た状況を作り出すことができるようになります。
また、経営者というのはさまざまな経験を乗り越えて今に至ることが多く、さまざまな経験を有する経営者から、過去の災害においてどのようなことが起きたのか、どのように対応したのかといった、生の声を聞くことができるのもグループワークの醍醐味です。
生きた情報ともいえる他者の経験・体験談を参考に、自社の事業継続を考えていくことは、一人で考えるよりも実践的であり、有意義であるといえるのです。
セミナーとワークショップの対比
事業継続力強化計画に関するセミナーとワークショップを対比して整理してみます。
セミナー | ワークショップ(グループワーク型) | |
内容 | 事業継続の重要性や事業継続力強化計画の制度・策定方法などを知識として習得 | 知識習得に加え、実際に自社の事業継続力強化計画を策定 |
特徴 | ・短時間で開催される ・流れが無駄に中断されることなく、スムーズに専門的な知識を習得可能 |
・計画の5~8割方を素案として完成できる ・グループワークによって、気付きやヒントを得ることができる ・計画策定だけでなく、事業継続力の強化を実現しやすい |
参加目的 | 事業継続や事業継続力強化計画について理解を深めたい人や、事業継続力強化計画の策定を自分一人(自社のみ)で行うことができる人におすすめ | 自分だけでは事業継続力強化計画の策定に不安がある人や、時間を有効活用してその場で事業継続力強化計画を策定したい場合におすすめ |
事業継続力の強化を重視するならグループワーク有りのワークショップ
認定を受けることも重要ですが、事業継続力を高めることを重視するならば、ワークショップへの参加・実施がおすすめです。
新型コロナウイルスによって、ビジネス環境が大きく変わるなか、事業継続力はますます必要性が高まっています。
事業継続力強化計画の策定に関して、セミナーとワークショップ、どちらに参加しようかと迷うならば、ワークショップ型への参加がおすすめです。ワークショップ型でも、特にグループワークにしっかりと時間を割いているものが良いでしょう。
グループワークを通じて、事業継続に対して意識の高い経営者と交流を深めることは、今後の経営において必ずプラスになるはずです。
事業継続力強化計画を自分だけで策定・作成する
セミナーやワークショップにはそれぞれ良さがあるわけですが、何らかの理由でそれらに参加せず自分だけで事業継続力強化計画を策定・作成して申請してみたいという方も多いのではないでしょうか。
自社だけで作成・策定するのはもちろん可能です。
当サイトでは、初めて事業継続力強化計画を作成する事業者が、2日間という短期間により自社で事業継続力強化計画の申請書を仕上げるポイントやノウハウを整理して紹介しています。
この機会に、挑戦してみてはいかがでしょうか。