なぜ事業継続力強化計画が必要なのか?

事業継続力強化計画

事業継続力強化計画認定制度がスタート

中小企業が取り組む防災・減災対策を整理・取りまとめ、申請を行い、経済産業大臣が認定する制度が「事業継続力強化計画の認定制度」です。令和元年7月16日に施行された中小企業強靭化法に基づく制度となっています。

BCP(事業継続計画)という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。

近年は、中小企業の事業継続は重要かつ大きなテーマ・キーワードとして取り上げられており、BCPの策定が重視されてきました。その流れを受け、中小企業における強靭化の必要性が高まる中、事業継続力強化計画認定制度の運用が開始されたという背景があります。

なぜ、事業継続力強化計画の必要性が高まっているのか

中小企業の経営者であれば、さまざまな経営上の困難を乗り越えて現在に至っている方がほとんどです。

ここ数年の間にもさまざまな自然災害が発生し、そのような災害を乗り越えてきた、という自負をお持ちの方も多いはずです。そのような経営者にとっては、いまさら事業継続に関する対策など必要性に乏しいと感じていることもあるかも知れません。

しかし、そのような経営者であっても、もっといえば、業種や規模を問わずすべての企業や事業者において、事業継続力を強化することの必要性や重要性は高く、それも年々高まっているのです。

どのような理由から、事業継続への取り組みが必要なのかについて説明をしていきます。

事業継続に関する取り組みなど自分には関係ない、とお考えの経営者の方ほど、確認していただきたい内容です。

自然災害が増えているから?

令和元年10月に発生した台風19号は、関東を中心に大きな被害をもたらしました。

また、平成30年にも西日本豪雨・北海道胆振東部地震が発生しており、近年は自然災害が増加しているように感じられます。

中小企業白書(2019年版)では、第3-2-6図にて災害救助法の適用実績を取り上げています。

災害救助法の適用実績図表

ほとんどの都道府県において災害救助法が適用されており、その回数も複数回が目立っています。

第3-2-5図では、大雨の発生件数がこの30年間で1.4倍に増加してことが分かります。

1時間降水量50㎜以上の年間発生回数図表

とはいえ、地震にしても、大雨にしても、昔から起きていたのは事実であり、確かに最近になって増加しているような感覚はありますが、実際には「印象に残るケースが増えた」ということが正確でしょう。

インターネットが普及し、気軽にSNSなどで情報発信、コミュニケーションができるようになり、被害の状況をリアルタイムで確認することができるようになりました。

例えば、令和元年の台風19号では、北陸新幹線が水に浸かっている光景が繰り返し報道され、あたかも自然災害が急増しているような印象を受ける結果となっています。

昔からこのような自然災害が起きていたのにも関わらず、人命の安全確保という考え方はあったものの、事業継続という考え方やBCPはそれほど強く主張されていなかったのが実態です。ならば、事業継続力強化の必要性として、自然災害の増加や被害の大規模化は全く関係がないとは言えないまでも、それが決定的な必要性とは言えない、と考えられるのではないでしょうか。

お客様から要望されるから?

近年は、サプライチェーンが複雑化・高度化しており、それぞれの企業が担う役割は非常に大きなものとなっています。例えば、部品供給を担う中小企業1社の事業が停止すれば、メーカーが組立をすることができなくなり、サプライチェーン全体に大きな影響を及ぼすことになります。

このような状況のなか、サプライチェーン上の取引先(一般的に親会社と呼ばれる立場の企業)から要請され、事業継続に関する計画策定を求められるということが増えてきています。サプライチェーン上の取引先はいわば自社にとってお客様ですから、その要求に従うというのは当然のことかもしれません。

しかし、事業継続への取り組みは、本来、「自助」で行うべきものです。つまり、お客様から言われたから対応するというのでは、そのお客様への計画をつくることになってしまいます。

サプライチェーンとしての事業継続に関する取り組みは、社会的に非常に重要なものですから、声を掛け合って策定するということは必要でしょう。とはいえ、お客様から言われたから作るというのでは、言われなければ作る必要がないということにも繋がってしまう危険性も指摘することができます。

したがって、事業継続に対する決定的な必要性とは言えないでしょう。

真の必要性はどこにあるのか?

事業継続の必要性を、時代背景という観点で考えてみます。

例えば、1990年代と現代を比較してみた時に、企業経営において変わったことにはどのようなものがあるでしょうか。

多くの経営者が感じていることだと思いますが、「経営環境」が明らかに変わっています

サプライチェーンにおいては、ジャスト・イン・タイムでの生産要請が行われるようになりました。また、さまざまな業界において、消費者も巻き込んだITによる24時間の受発注システムが登場・稼働しています。

需要予測の精度が向上したこともあって、メーカーは、極力在庫を持たずに、顧客が必要とする製品を必要な時に必要なだけ生産し、スピーディーに提供することが可能な時代となりました。

このように、ICTの普及や物流の進化といった、いわばインフラを中心とした技術革新や高度化は、ビジネス環境をより速いものへと変えています。つまり、昔と比べて圧倒的に「ビジネスのスピードがアップしている」わけです。

中小企業白書(2014年版)の第2-1-28図では、ITの普及に伴う市場や経営環境の変化の内容を、企業規模別に整理しています。

ITの普及に伴う市場や経営環境の変化の内容図表

企業規模問わず、ビジネスのスピードが速まっている(と感じている)ことが分かります。

このような変化は、企業側のみならず、消費者にとってもたいへん利便性が高く、さまざまなメリットを提供・享受し合っています。

しかし、早く動いているということは、それが急に止まってしまうと、極めて大きな影響を与えることに繋がっていきます。

例えば、我々の生活にとって欠かすことのできないコンビニエンスストアを考えてみます。

昔はみんな在庫を多めに持っていました。発注してもすぐに納品されるとは限らず、また、需要予測も今ほどは正確ではなかったことから、何かあった時に備えて、バックヤードに大量の商品を保管していました。

しかし、現在は、食料品などの製造から流通は、ジャストインタイム(必要なものを,必要な量だけ,必要なときに)が実現されています。コンビニエンスストアでは、店舗内の商品を極力減らして在庫を持たず、その代わり、商品は1日に3回程度定期補充されています。これは、ICTと物流の進歩によって実現されていると言って良いでしょう。

地震が発生した時、どのようなことが考えられるでしょうか。

運送会社の事業が停止すれば、店舗の在庫はすぐになくなってしまうはずです。また、商品の材料供給会社の事業が停止すれば、製造を行うことができず、物流が動いていても店頭に並ぶことはありません。

スピード経営が求められる現代社会にあっては、できるだけ無駄を排除するという考え方が前提となっており、在庫をできるだけ持たないことが基本です。この結果、物流が止まればお店では商品がなくなってしまい、物流が動いていても材料供給がなされなければ生産・製造活動を行うことができません。

このように、事業環境のスピードが速まった環境下においては、それぞれの企業が事業を停止するということの社会に与える影響が非常に大きなものとなっているわけです。

ここに、事業継続の早期対応の必要性および重要性を指摘することができます

速いスピードの中で事業活動を行っているということは、事業の復旧もそれに合わせて早く行う必要性があります。

下図は、BCP(事業継続計画)を策定・導入した場合と、策定していない場合の違いを示したものです。

BCP策定時の効果イメージ図表
図表引用:BCP策定のためのヒント(中小企業庁)

地震や洪水などの緊急事態が発生した時、全ての企業で操業が落ち込みます。

何ら対策をしていない企業であれば、完全停止というレベルまで落ち込むことも少なくありません。一方、BCP導入企業は操業が完全にゼロにはならず、また、復旧までのスピードを速めることが可能なのです。

確かに、事業継続力を高めておかなくても、緊急事態において臨機応変に行動することで復旧することは可能かもしれません。しかし、事前に事業継続力強化を行っておくことで、復旧までのスピードを高め、自社の事業停止による影響を最小に抑えることができるわけです。

これが、事業継続力を強化するうえで最もポイントといえる考え方です。

経営環境のスピードが増している社会にあって、自社が与える社会への影響は大きなものとなっています。その中で、緊急事態が生じたときに、影響を最小にしていくためには、緊急時の行動をどれだけ迅速かつ的確にできるかどうかが重要になってきます。

事業継続力強化計画の必要性はここにあると言えるでしょう。

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