事業継続力強化計画と防災計画の違いは?策定するならどっち

事業継続力強化計画

新型コロナウイルス感染症の影響もあって、自然災害等への対策が注目されています。対策の一環として策定が推奨されるものとして、「防災計画」「事業継続計画(BCP)」「事業継続力強化計画」などがあります。

似たような名前の計画が増えているものの、その内容の違いは分かりにくいことから、「自然災害等への対策を行いたいが、まずは防災計画が良いのか、それとも事業継続力強化計画が良いのか。あるいは、理想として真っ先にBCPが良いのだろうか」と混乱している経営者がいてもそれは当然のことです。

事業継続力強化計画と防災(計画)の違いについて、BCP(事業継続計画)との関係についても触れながら確認していきます。

防災計画とBCP(事業継続計画)の違い

防災への取り組みは、内閣府が中心となって古くから進められてきました。最近では、BCP(事業継続計画)もその重要性から、経済産業省によって積極的な取り組みが推進されてきたところです。

そんな中、中小企業強靭化法が令和元年7月16日に施行され、事業継続力強化計画の策定が推進されるようになっています。

事業継続力強化計画は最も新しい概念(アプローチ)での取り組みとなりますので、まずは、古くから存在する防災計画とBCPの違いについて解説していきます。

防災(計画)とは

防災とは、自然災害が発生した際に人命の確保を目的として取り組まれる事前対策のことです。防災への取り組みを計画にしたものを防災計画とここでは呼ぶことにします。(一般的には、国や地方自治体が策定する防災基本計画と地域防災計画を防災計画と呼んでいます。)

防災への取り組みは、人命の確保に向けた対策が中心となっており、安全の確保や初動に特化しています。具体的に中小事業者で取り組まれているものは、中小企業白書を参考することができます。

中小企業白書によると、自然災害への備えとして行っているソフト対策として、「従業員の安否確認に関するルールの策定」「水・食料・災害用品などの備蓄」「従業員への避難経路や避難場所の周知」が上位となっています。

従業員規模別に見た、自然災害への備えとして行っているソフト対策
出所:中小企業白書2019、中小企業庁

これらの取り組みは、従業員の生命に関するものですから、防災対策に該当するものと言えるでしょう。

BCPとは

BCP(Business Continuity Plan)は事業継続計画と言われ、企業が自然災害等の緊急事態に遭遇した場合、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法・手段などを取り決めて文書化したものです。

BCPの取り組みは、社会(顧客・取引先・サプライチェーンなどのステークホルダー)への影響を最小限に留めるために、自社の事業を継続することができるための事前対策が中心となっています。

先の調査結果であるソフト対策の中で、「被災時に取引先へ連絡するための連絡先リストの作成」「被災時に復旧を優先すべき業務の把握」「自社の業務継続のための重要な経営資源の把握」は、BCPの取り組みと考えることができます。

また、自然災害への備えとして行っているハード対策として、「建屋や機械設備の耐震・免震、耐雪のための固定の実施」「事業継続に必要な情報のバックアップ対策」「非常用発電機などの、停電に備えた機器の導入」が挙げられています。

従業員規模別に見た、自然災害への備えとして行っているハード対策
出所:中小企業白書2019、中小企業庁

「建屋や機械設備の耐震・免震、耐雪のための固定の実施」は人命の確保と事業継続の両方に資する取り組みと考えられますが、「事業継続に必要な情報のバックアップ対策」「非常用発電機などの、停電に備えた機器の導入」はBCPを策定しているかどうかは別としても、BCP関連の取り組みであることは明らかです。

防災計画とBCP(事業継続計画)の関係

両者を目的で整理をしてみると、防災は「人命の確保」に重きが置かれており、BCPでは「事業の継続」に重きが置かれています。とはいえ、両者が全く異なるものであるということではありません。

防災(計画)とBCPの関係をイメージ図としてまとめると次のようになります。

防災計画と事業継続力強化計画、BCP(事業継続計画)の関係図

BCPの主目的は事業の継続にありますが、事業を継続するためには「人命の確保」が大前提です。機械設備などのハードを事前対策によって守り抜いても、それを操作する従業員がいなければ事業を継続することはできません。

したがって、BCPには人命の確保に関する取り組みも必然的に含まれることになり、結果的に、「BCPは最低限の防災計画を兼ねたもの」と言うことができます。

また、防災においては、人命の確保に向けた事前対策という予防に重点が置かれています。BCPでは予防に加えて、緊急時に実際に事業を継続する対応にまで踏み込んでいる点も異なるところでしょう。

事業継続力強化計画と防災計画、BCPとの違い

ズバリ、事業継続力強化計画は、防災(計画)とBCPの良いところ取り、というのが一番分かりやすい説明だと思います。

近年、「企業防災」という言葉が使われるようになってきています。企業防災とは、「防災」と「BCP」を組み合わせたものです。

緊急事態が発生すれば、企業にとっては、防災としての人命の確保もBCPとしての事業継続も、どちらも重要なことであり、どちらかを優先するという取捨選択の話ではありません。
いわば、企業は、防災とBCPの2つのアプローチによる取り組みを行う必要が不可欠で、この考え方を「企業防災」と呼んでいるのです。企業防災は、企業の社会的責任という点からも注目されている取り組みなのです。

事業継続力強化計画では、BCPとは違うアプローチが用いられており、事業の「継続力」を高めることに重きが置かれていることが特徴です。
(詳しくは、事業継続力強化計画とBCPの違いを参照)

つまり、自然災害等の発生時に、従業員の人命を守る初動対応はもちろん、事業継続に向けた事前対策を重要な経営資源に施すことを通じて、緊急事態が発生した時であっても、事業を継続するための力(チカラ)を高めておくということが趣旨です。

事業継続力強化計画で策定する中には、防災に関することも、BCPに関することも含まれている、ということになりますので、事業継続力強化計画を策定することは、防災(計画)とBCPの両方を策定することにつながっているということになります。

防災やBCPの取り組み状況

防災の取り組み状況を確認してみます。

中小企業白書によると、中小企業・小規模事業者のうち、自然災害への備えに具体的に取り組んでいる割合は、45.9%と半数以下であるとしています。

自然災害への備えに具体的に取り組んでいる割合
出所:中小企業白書2019、中小企業庁

この資料では、防災(計画)への取り組みという言い方はしていませんが、自然災害への備えは防災に含まれるものと解釈できるものといえます。

続いて、BCPの策定状況はどの程度でしょうか。
中小企業白書によると、中小企業・小規模事業者のうち、BCPを策定している割合は16.9%となっており、非常に低い水準であることが分かります。

従業員規模別に見た、BCPの策定状況
出所:中小企業白書2019、中小企業庁

防災に比べ、BCPの取り組みが低いということは、中小企業・小規模事業者においては、人命の確保は重視されつつあるものの、事業の継続についてはそれほど意識されていないということが指摘できます。

環境が目まぐるしく変化する現代にあって、経営を取り巻くスピードは速まり続け、中小企業・小規模事業者が事業を継続できないような状況になれば、社会に与える影響は極めて甚大なものとなってしまいます。

地域社会にとって中小企業・小規模事業者は、住民にとって価値を提供する重要な存在であり、規模は小さくても与える影響は大きいわけですから、今後は、事業継続に関してより深い理解と取り組みが求められていきます。

いま、事業継続力強化計画の策定に取り組むことの意義は非常に大きいということを指摘することができます。

せっかくの機会ですから、なぜ事業継続が大切なのか確認しておきませんか、事業継続力強化計画の必要性へ。

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