事業継続力強化計画が人気の業種は?認定企業の7割が製造業

事業継続力強化計画

業継続力強化計画の認定状況に関する資料が中小企業庁より公開されました。

この資料は、中小企業庁にて行われている中小企業強靭化研究会(中小企業施策に係る研究会)にて公開されたものです。事業継続力強化計画については、今までも都道府県別の認定件数は毎月公開されていましたが、本資料では、認定企業の業種や従業員規模などが明らかにされており、興味深いデータとなっています。

事業継続力強化計画の認定状況から分かること

特に押さえておきたいポイントとして、次の5つがあります。

  1. 事業継続力強化計画の認定制度がスタートした2019年7月から2020年5月までのおよそ10か月間で8,600件が認定された
  2. 認定企業の業種別では、約7割を製造業が占めている
  3. 認定企業の従業員別では、6割が個人事業主を含む小規模事業者である
  4. 事業継続力強化計画は5割の事業者が単独で策定している
  5. 対象設備の導入によって税制優遇の活用を予定している事業者は約200社程度である

それぞれについて解説をしていきます。

1.認定件数

事業継続力強化計画の認定件数は、認定制度開始当初から毎月公開されていました。令和元年7月の制度開始後、令和2 年3月末までで5,920件(単独型)が認定を受けています。その後、全国で毎月1,500件程度が新たに認定されており、令和2年5月末時点では8,600件となっています。

なお、令和2年6月末時点で大台となる10,000件を突破しました。

事業継続力強化計画の地域別認定件数・認定率(2020年6月)」で都道府県別の認定状況を整理してあります。

2.認定企業の業種

事業継続力強化計画の認定企業を業種別にみると、製造業その他が69%を占めています。次いでサービス業が21%であり、この2業種で全体の9割を占めています。

事業継続力強化計画の認定状況(中小企業庁)、製造業で認定事業者が多い
(出所:事業継続力強化計画の認定状況等について、令和2年7月2日、中小企業庁)

認定企業に製造業が多いのは、どのような理由によるものでしょうか。

小規模事業者の業種別構成を見ると、製造業は全体の11.0%しか存在せず、極端に多いというわけではありません。

むしろ、卸売業や小売業・宿泊業や飲食サービス業の方が多くなっていますので、「小規模事業者には製造業が多いから」といった理由で、事業継続力強化計画の認定割合が製造業は高い、という結論は正しくないようです。

小規模事業者の業種別構成(小規模企業白書2016年版)
(出所:小規模企業白書2016年版、中小企業庁)
BCPの策定状況(業種別)、内閣府
(出所:「平成29年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の概要、内閣府)

事業継続力強化計画と似たものにBCP(事業継続計画)があります。BCPは大企業を始めたとした規模の大きな企業で策定が進んでいますが、策定企業として多い業種(平成29年度)には「金融・保険業」があります。次いで、「情報通信業」「運輸業・郵便業」「製造業」「建設業」となっています。

事業継続力強化計画の対象企業は中小企業・小規模事業者であり、金融・保険業といった特殊な業種は少ないことを考えると、BCP策定企業の上位は製造業となり、これは事業継続力強化計画の認定業種と同じ傾向にあると言えます。

しかし、BCPと同じ傾向がみられるとしたら、「建設業」「卸売業」「サービス業」は事業継続力強化計画においてもっと多くの認定企業が存在しても不思議ではありません

この点、ものづくり補助金との関係性を指摘することができます。事業継続力強化計画は認定制度が開始された当初から、認定を受けることでものづくり補助金の加点対象とされており、2020年現在も加点対象として認定を受けた事業者は優遇措置が設けられています。

BCPの策定傾向として見られるように、製造業はサプライチェーンの中で担う役割が多く、事業継続に対する意識が高いという理由はもちろんあるでしょう。加えて、BCPの策定傾向に比べて製造業が突出して多いことを踏まえると、ものづくり補助金の対象は製造業が大半であることから、ものづくり補助金の加点を意識して事業継続力強化計画を策定する事業者も多いことが指摘できます。

3.認定企業の従業員別規模

従業員別では、6人~20人の企業が35%で最も多く、次いで0~5人の25%となっています。これら、個人事業主を含む小規模事業者で約6割を占めています

21人以上では、従業員数が多くなればなるほど構成比は小さくなっていくことが分かります。

BCPの策定状況では、従業員規模が大きくなればなるほど策定率も高いという傾向にあります。

従業員規模別に見た中小企業のBCPの策定状況
(出所:2016年版中小企業白書、中小企業庁)

事業継続力強化計画は、BCPの策定に敷居の高さを感じていた小規模事業者が積極的に認定を受けているという事実が明らかになりました。これは、事業継続力強化計画が創設された際の狙い通りの結果となっていると言えそうです。

4.実施協力者(策定協力者)の存在

事業継続力強化計画では、実施の協力者を記載することができます。協力者を記載しなかった割合は50.7%(3,000件/5,920件)と半数を占めており、これらは単独で事業継続力強化計画を策定したものと考えられます。(ただし、策定時に協力を受けた者の記載は任意となっていますので、支援を受けたものの記載しなかったというケースも多いと考えられます)

事業継続力の強化の実施の協力者、税制措置の利用状況について
(出所:事業継続力強化計画の認定状況等について、令和2年7月2日、中小企業庁)

事業継続力強化計画に関しては、「事業継続力強化計画策定の手引き」を始めとして、事業継続力強化計画ワークショップテキストなど、策定のための資料が豊富に公開されており、事業者が単独で策定することができる環境が整っています。

BCPに関する調査結果では、策定していない理由として「人手不足」「複雑で、取り組むハードルが高い」といった回答が常に上位を占めていました。

BCPを策定していない理由
(出所:中小企業白書2019年度、中小企業庁)

事業継続力強化計画においては、小規模事業者の策定割合が高く、かつ、単独での策定者が多いことを踏まえれば、策定に関する資料が整備されていることに加え、BCPよりも敷居は確実に低いということが言えるでしょう。

意欲のある事業者を支援するという事業継続力強化計画の考え方が、現実にもしっかりと反映され、大きな成果となっていると言えそうです。

5.税制優遇の活用

事業継続力強化計画では、認定計画に従って取得した一定の設備等について、取得価額の20%の特別償却を受けることができる税制優遇が準備されています。この制度の活用を予定し、認定を受けた企業はおよそ200社ということで、認定企業全体のうちそれほど多い件数ではありません。

税制優遇の対象となる設備は、器具及び備品で30万円以上、建物付属設備で60万円以上、機械及び装置では100万円以上となっています。事業継続力強化計画の認定企業には小規模事業者が多く高額な設備導入は負担が大きいこと、そもそも税制優遇を期待して事業継続力強化計画の認定を受ける企業が少ないということが理由でしょう。

その他

事業継続力強化計画に関して、令和元年度にはさまざまな支援策が展開されています。

令和元年度に実施した中小企業強靭化対策事業の概要について
(出所:事業継続力強化計画の認定状況等について、令和2年7月2日、中小企業庁)

中小企業等強靭化対策事業として、普及啓発ではセミナー・相談会に約1,500名が参加したほか、計画策定支援ではワークショップに全国から約1,100社が出席、計画策定支援にも650社が支援を受けています。650社すべてが認定を受けているならば、認定企業全体の1割は策定支援企業が占めていることになります。これは非常に大きな割合です。

また、指導人材の育成では商工会・商工会議所の研修会に約1,100名が参加し、専門家の育成研修会には約600名が参加しています。

令和2年度の支援策

令和2年度においても、事業継続力強化計画に関する支援策がいろいろと展開される予定となっています。

令和2年度中小企業基盤整備機構が行う中小企業強靭化対策事業等について
(出所:事業継続力強化計画の認定状況等について、令和2年7月2日、中小企業庁)

令和2年に入り、新型コロナウイルス感染症が広がりを見せるなか、事業継続に対する企業の意識は急激に高まっています。また、自然災害は減るどころか年々、発生数は増加し、被害状況も大規模化が進む中、事業継続力強化計画はその必要性がますます高まっているものといえるでしょう。

事業継続力強化計画は、防災・減災計画を策定したことがない事業者であっても、自力で策定することが可能です。詳しくは、「事業継続力強化計画の策定方法は3つ!特徴とおすすめの方法を紹介」へ。

また、事業継続力強化計画のメリットを確認してみたいという方は、「事業継続力強化計画のメリット!4つの本質とインセンティブ6つ」を参考にしてください。

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