事業継続力強化計画の認定後は運用を!最低この3つはやろう

事業継続力強化計画

事業継続力強化計画の策定が終わり、無事認定を受けたならば、それは素晴らしいことです。

事業継続力強化計画の様式は、その策定プロセス(策定ステップ)が実効性を高める観点から非常に工夫されていることから、策定時に十分な検討を行ったのであれば、それだけで事業継続力の強化はある程度実現することができています。

しかし、認定されたことだけで満足してしまってはもったいない。実効性をさらに高めるためには、継続的な訓練を行うことで自社内に定着を図っていくことが必須となります。

とはいえ、「訓練」といっても何をどのように進めていけば分からないという経営者も多いことから、ここでは、事業継続力強化計画の認定を受けたらまずはやっておきたい3つのことを紹介しておきます。

訓練する前には運用が必要で、運用する前には導入が必要です。まずは、導入から始めてみるのはいかがでしょうか。

事業継続力強化計画の認定は訓練を行うことが大前提

事業継続力強化計画では、「平時の推進体制の整備、訓練及び教育の実施その他の事業継続力強化の実効性を確保するための取組」を検討し、申請計画書に記載することが認定の要件となっています。

事業継続力強化計画策定の手引きより抜粋
事業継続力強化計画策定の手引きにおける訓練及び教育の実施その他の事業継続力強化の実効性を確保するための取り組みに関する説明

出所:事業継続力強化計画策定の手引き(令和2年6月15日版)

事業継続力強化計画策定の手引きには次のような記載があります。

① 実効性を確保するために、平時から行う取組を検討します。
② 以下の3点全てについて、自社の取組を検討し、必ず記載してください。
・平時の取組推進について、経営層の指揮の下実施する体制を整える。
・年1回以上、訓練や教育を実施する体制を整える。
・年1回以上、事業継続に向けた取組内容の見直しを計画する。

認定を受けた事業者であれば、「平時における推進体制の整備」、「年1回以上の訓練・教育」、「年1回以上の取り組み内容の見直し」を行うことを検討し、記載がされているはずです。

ところが、事業継続力強化計画は認定を受けた後、実際に取り組んだことについて報告するような仕組みは用意されていませんので、実効性を高めるための取り組みについては事業者の自主性に委ねられています。

もっとも、一人社長のみの会社やフリーランスであれば、事業継続力は、策定者自身の行動力と限りなくイコールになるため、体制整備といっても実際に行うことは限られています。しかし、従業員を雇用している事業者であれば、しっかりとした取り組みが必要となります。

まずは体制整備を行う

事業継続力強化計画では、主にソフト面の取り組みとハード面の取り組みに分けることができます。

ソフト対策とは、大きな設備投資を必要とせずとも実施できるソフト面での対策のことであり、ハード対策とは、施設整備などを必要とするハード面での対策のことです。

中小企業白書では、自然災害への備えに取り組んでいる企業が具体的にどのようなことを行っているか、ソフト対策とハード対策に分けて分析を行っています。

ハード対策とソフト対策を比較すると、ソフト対策の方が多くの企業で取り組まれていることが分かります。

従業員規模別に見た、自然災害への備えとして行っているハード対策

従業員規模別に見た、自然災害への備えとして行っているソフト対策
出所:中小企業白書2019、中小企業庁

ハード対策よりもソフト対策の方が取り組まれている理由は、資金的な敷居の低さから来る取り組みやすさという点もそうですが、重要性が高いからということもあるでしょう。

ソフト対策での取り組みを見ると、「従業員の安否確認に関するルールの策定」が最も多く、「水・食料・災害用品などの備蓄」、「従業員への避難経路や避難場所の周知」と続いています。

これらは、事業継続力強化計画でも重視されている初動対応の内容およびその事前準備そのものです。

事業者にとって従業員の命を守ることは最も重要性の高いことであり、それは、いかなる災害発生時においても優先されるべきものです。つまり、ハード対策は地震や火災といった特定の災害に対して行われるものですが、ソフト対策の中でも「初動対応」に関しては、あらゆる自然災害等が生じた場合にも行われる必要がありますので、その点も含めて、優先的に取り組まれているものと考えることができます。

まずは情報共有を進める

体制整備と聞くと難しいイメージを持ってしまいますが、最低でも初動対応が行われるように社内を整備すること、と考えると良いでしょう。

あなたの会社でも、事業継続力強化計画の認定を受けた後は、少なくとも初動対応の知識を共有できるようにしておくことを優先して行うのはいかがでしょうか。そのうえで、さらに発展的な体制整備や訓練といった流れにつなげていくのです。

事業継続力強化計画は、計画書として保管し、マニュアルとして参照しながら活用するような性質のものではありません(参考:事業継続力強化計画とBCPの違い)。どちらかというと、計画書に記載された内容は、経営者および従業員の頭の中に格納されていて、緊急時に各自がそこから情報を引き出して行動に起こせることが、事業継続力の強化としては求められています

認定を受けたならば、まずは「情報共有」が必要です。

次の3つのアクションを起こすと、最低でも初動対応については共有することができるはずです。

1.認定を受けた事業継続力強化計画の印刷

事業継続力強化計画を大切にデータで保管しておいても意味がありません。自然災害等の発生時に停電が起こって、データを見ることができないということになれば、何の意味もありません。

また、紙ベースの方が従業員との共有はしやすいですから、従業員の人数分印刷すると良いです。

印刷するのは、認定時に返送されてきた認定書(表紙が認定通知書で中身が申請計画書)を複写するのがおすすめです。国からの押印がなされた認定書(申請計画書)を従業員が見ることは、事業継続に対して従業員の意識を高め、かつ、同一の目標へ向かってベクトルを合わせる効果を期待できます

2.配布と情報共有

従業員に対して複写した事業継続力強化計画を配布します。配布しただけでは情報がしっかりと伝わりませんので、全体会議のような場を設け、経営者自らが事業継続に対する取り組みに関して、経緯や目標、具体的に行うことを従業員に向けて宣言する必要があります。

そのうえで、事業継続力強化に資するために社内体制を整備する旨を伝え、構成メンバーなどを指名します。その後、まずは従業員の安全確保を最優先で取り組むため、初動対応について整備していくことを伝えます。

3.従業員連絡先情報の整備

事業継続力強化に中心的に取り組む構成メンバーによって、従業員の連絡先リストの作成などを進めます。既に整備されている事業所も多いと思いますが、変更が生じていることも多いため、更新という意味も含めあらためて行う必要があります。

そして、漏れや抜けがないかどうかを検証するため、自然災害等が発生した前提で、連絡網が機能するかどうか確認します。併せて、安全に避難できるようにしておくため、避難動線の確認は最低でも行っておきます。

この3つに取り組むことで、初動対応を行動レベルで実現できる仕組みを社内に構築することができますので、ソフト面での対策という点では大きな第一歩だといえます。

ソフト面での対策といってもハードルが高そうに思う経営者も多いと思いますが、ほとんどの事業者は、情報共有や訓練などはやったことがないため、難しいイメージを持っているだけで、実際に行ってみると考えていたほど難しいことではない、という感想を持つケースが大半です。

もちろん、最初からすべての従業員が意欲を持って取り組んでくれるとは限りませんが、事業継続の重要性などを伝えながら繰り返し取り組んでいくことで、次第に社内に定着していくことになります。

国からの認定を活かす

事業継続力強化計画は、国による認定の制度です。まだ認知度は低く、認定事業者数も少ないですが、だからこそいち早く取り組み、国から認定されたという事実は、従業員の事業継続に対する意識を高める効果を期待することができます。

単に認定された事実や計画書だけを共有するのではなく、事業継続力強化計画の認定を受けるに至った経緯や、これによって目指すもの、国(中小企業庁)のホームページ上で事業所名が公開されていること、などを従業員にトップがしっかりと伝えていくことも、事業継続力強化計画を認定という事実だけで終わらせない鍵を握っています。

経営者から率先して取り組んでいくことが事業継続力強化計画の運用におけるポイントであり、そのためには想いを伝えるだけではなく、今すぐにできるソフト面の取り組み(導入)を絡めると良いでしょう。

せっかく認定を受けたからといって、最初からあれもこれもというのも良いですが、認定を受けたからこそできることからコツコツと積み上げていった方が、結果的に短期かつ長期的な両方の視点から事業継続力を強化できる可能性が高いといえます。

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