認定済み事業継続力強化計画の変更を検討しよう!感染症を追加したい理由

事業継続力強化計画

令和元年7月より開始された事業継続力強化計画の認定制度ですが、制度開始当初は新型コロナウイルス感染症が存在しておらず、リスクの範囲は自然災害(地震、水害、土砂崩れ等)のみとなっていました。

その後、新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、企業の事業継続において大きな影響を及ぼすリスクとして「感染症等」「サイバー攻撃」が追加され、令和2年10月から法改正されました。

現在は、リスクの把握については、自然災害だけではなく感染症も含めて把握し、事業継続力強化計画の策定内容に「感染症」を加えることが強く推奨されています。

事業継続力強化計画は変更申請が可能

事業継続力強化計画の支援対象に感染症が加わったのは令和2年10月ですから、少なくてもそれ以前に認定を受けた事業者は感染症に関する内容は盛り込んでいないはずです。

令和2年9月末時点の事業継続力強化計画の認定事業者数は、全国で15,143件(出所:中小企業・地域別認定件数一覧(令和2年9月末日時点))存在します。事業継続力強化計画の認定を受けている場合、内容を変更した場合には変更申請を行うことで、新たな内容で認定を受けることが可能となります。

事業継続力強化計画に感染症の内容を加えたい理由

新型コロナウイルス感染症の影響は、地域や業種によって多少の差はあっても、ほぼすべての事業者が何らかの影響を受けていると言って良いでしょう。そして、地震などの自然災害に匹敵するほど、あるいはそれ以上の大きな影響を受けている事業者も少なくありません。

現状、新型コロナウイルス感染症に関していえば、日々の感染症対応をしっかりと行っているのは当然のことだと言えますが、あくまでも「対応」であって、事業継続までを意識した「対策」を行っている事業者は少ないことを指摘できます。

また、コロナ禍にあって、通常時と異なる経営資源の配分や運営がなされていることが多くなっています。このような状況下で自然災害が発生したならば、現在策定されている事業継続力強化計画がしっかりと機能するでしょうか。

もちろん、自然災害であっても複数のことが同時または連続して発生するおそれはゼロではありませんので、複数リスクを検討したうえで1つのリスクに絞り込んで検討を行う事業継続力強化計画のフォーマットに限界があることも事実です。

ですから、新型コロナウイルス感染症は既に拡大しており、まだまだ終息が見えないことを踏まえれば、自然災害に感染症対策を加えることは今後の事業継続を考えれば極めて重要であるといえます。

また、自然災害と感染症を横断(クロス)して検討を重ねると、経営資源の活用や限界といったことも把握できるようになりますので、今後の事業展開を見直す機会にもつながります。

実際、感染症を踏まえた事業継続力強化計画を策定することで、業態転換や新規事業の方向性が見えてきたという事例も出始めています。

新型コロナウイルス感染症を機に事業継続について検討をする企業が増加

10年ほど前にも、実は感染症の拡大が危惧されたことがあります。いわゆる、新型インフルエンザ感染症ですが、幸運にも我が国においては大きな影響は見られませんでした。

しかし、今回の新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、企業も事業継続に向けた計画を策定し始めています。

企業に対して好ましくない事象(リスク)が生じた際、事業を止めることなく継続させていくことを目的にした計画を事業継続計画(BCP)と言います。

みずほ情報総研株式会社の調査によると、新型コロナウイルス感染症が流行する前から事業継続計画(BCP)を策定していた企業は、全体では約4割となっており、従業員数が多いほど高いことが分かります。

さらに、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて新たに策定した・策定中であるという企業は全体で約4割となっています。

新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCPに関する調査
出所:新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCPに関する調査、2020.9.8、みずほ情報総研株式会社経営・ITコンサルティング部

事業継続計画(BCP)は長年にわたって策定を推進してきたものの、なかなか普及せず、それが理由でややハードルを下げた事業継続力強化計画が登場したという背景があったのです。

しかし、新型コロナウイルス感染症によって事業継続計画の策定企業(策定中も含む)が一気に2倍になったというのは、本当に驚異的なことであり、それほどまでに新型コロナウイルス感染症への危機感が各企業において大きなものであることが分かります。

同調査では、事業継続計画(BCP)で想定している事象についてアンケートを行っています。これを見ると、新型コロナウイルス感染症をきっかけに、感染症対策を内容に盛り込んでいる企業が多いことが分かります。

新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCPに関する調査
出所:新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCPに関する調査、2020.9.8、みずほ情報総研株式会社経営・ITコンサルティング部

この調査結果は、比較的な大きな企業が前提になっているわけですが、中小企業・小規模事業者においても事業継続に関する計画のニーズは高まっていると考えられ、まさに「事業継続力強化計画」こそ、必要性の高いツールであるといえます。

このような流れを受けるのであれば、事業継続力強化計画に感染症対策を盛り込むことの重要性を指摘することができます。

自然災害と感染症の違い

自社に対するリスク(好ましくないもの)という意味では、自然災害も感染症も同じと考えることができます。ところが、事業継続という意味で考えた場合、自然災害と感染症では異なる部分が多いということに注意が必要です。

例えば、自然災害では被害の対象は設備などのモノとなることが多い一方、感染症では被害の対象はヒトに限定されることになります。また、被害の期間については、災害の場合にはある程度過去の経験から導き出すことができますが、感染症の場合には予測ができない。

中小企業 BCP 策定運用指針を用いた新型インフルエンザ対策のための中小企業 BCP(事業継続計画)策定指針
出所:中小企業 BCP 策定運用指針を用いた新型インフルエンザ対策のための中小企業 BCP(事業継続計画)策定指針(2009)、経済産業省・中小企業庁

このように、自然災害と感染症ではリスクという意味では同じでも、影響という意味ではさまざまな面での違いがあります

自分(自社)が被災している経験を持つ企業ほど事業継続計画を策定している割合が高いというデータがあります。リスクを実際に体験することは、それが経営に与えるインパクトを肌で感じることを通じて、計画策定へと動機づけるということだと言えますが、そうならば、今回の新型コロナウイルス感染症で起こったことのすべては、我々がしっかりと整理し、今後の経営に生かしていく必要があると言えます。

事業継続力強化計画策定の手引きは、頻繁に改定がされ、より良い内容へとバージョンアップが繰り返し行われているのですが、特に令和3年1月15日版での変更によって、感染症に関する情報が豊富に追加されました。

例えば、今回の新型コロナウイルス感染症の影響が時系列で整理されており、今後発生するおそれのある新型インフルエンザ感染症等への対策の参考にすることができるようになっています。

新型コロナウイルス感染症が中小企業の事業活動に及ぼした影響(時系列)
出所:事業継続力強化計画策定の手引き(令和3年3月8日版)

他にも、感染症対策に役立つコラムなども充実しており、もちろんボリュームが増えた分、事業継続力強化計画を策定するという意味ではやや複雑になったように見えますが、事業継続に対するマニュアル的な役割を果たすような工夫がされていると言えます。

事業継続力強化計画は、いったん策定が終わり認定を受けてしまえば最新の手引きを見るということはないと思いますが、定期的にチェックするようにすると常に最新の情報を手に入れることができます。

手引きの最終ページには、いつ、どこが変更されたのかが簡単に分かるようになっていますので、変更分をすぐに把握することができます。

感染症に対する事業継続力強化

事業継続力強化計画では、5つのステップによって事業継続力の強化を図っていくわけですが、これは対象が自然災害であろうが、感染症等であろうが変わることはありません。

事業継続力強化計画策定の5つのステップ
出所:事業継続力強化計画策定の手引き(令和3年3月8日版)

目的を明確にしたうえで、感染症等のリスクを認識し、事業に与える影響を整理します。

今回、新型インフルエンザ感染症の影響は企業によってさまざまでしょうが、事業活動に与える(実際に与えた)影響を実体験としてまとめておくことは非常に意味のあることです。今後の事業活動において、同様の感染症等が発生した時には、実効性の高い初動対応を取ることができるようになりますし、予め行っておかなければならない事前対策についても、伝聞や本などから得た情報ではなく、実体験に基づいて本当に必要な対策を具体的に考えることができます。

事前対策は、感染症等が発生する以外のことでも有効に機能させることができることがあります。

例えば、感染症等に備えたテレワーク設備の導入は、感染症だけでなく自然災害の発生時においても有効に機能させることで、事業継続を実現することに役立つはずです。マスクや消毒液など衛生用品の備蓄は、非常食などと関連して準備しておくことで、さまざまな緊急時に役立てることが可能となります。

また、新型コロナウイルス感染症が何らかの事由によって拡大したり、終息に時間が掛かったりすれば、事業継続力を強化する取り組み自体が経営戦略的に極めて重要な意味を持つようにもなってきます。

緊急事態宣言などが発令されれば、自社の経営努力とは無関係に事業継続が極めて困難になるということも今回の新型コロナウイルス感染症の影響によって明らかになりました。そう考えると、近い将来、また緊急事態宣言が発令された時には事業展開や事業再構築といった観点からの事業継続をも検討せざるを得ないケースも出てきます。

ここまでくれば経営戦略のレベルとも言えますが、言い換えれば、事業継続力を強化することや感染症等のリスク対応を掘り下げて考えることというのは、自社の経営戦略を考えていることと同義であると言えます。

事業継続力強化計画の内容に感染症等を加える

事業継続力強化計画で想定するリスクに関しては、次の3つのうちから選択することができるようになっています。

  • 自然災害と感染症等の両方を対象リスクとする
  • 自然災害のみを対象リスクとする
  • 感染症等のみを対象リスクとする

いずれのパターンでも認定を受けることができ、自然災害のみを対象に事業継続力強化計画の認定を受けている事業者が多いと想定されますが、感染症等については、今後はもちろん現在においても事業継続について大きなリスク要因となっています。

これから事業継続力強化計画を策定する事業者は、自然災害だけでなく感染症等についても検討を加えるのが理想的です。

また、既に事業継続力強化計画の認定を受けている事業者は、感染症等をリスクに加えた変更版の事業継続力強化計画を策定し、変更申請を行うのはいかがでしょうか。認定を受けた内容の振り返りを行うことでPDCAを回すこともできますのでおすすめです。

事業継続力強化計画の変更申請の方法についてはこちらを参考にしてください。

事業継続力強化計画の変更申請方法【申請書と報告書の記入例】

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