連携事業継続力強化計画とは?単独型と連携型の違いについて

事業継続力強化計画

事業継続力強化計画には、単独型(いわゆる通常の事業継続力強化計画)と、連携型(連携事業継続力強化計画)の2つがあります。

両者の違いについて説明していきます。

単独型と連携型の違いとは

独型と連携型の最大の違いは、対象とするリスクの捉え方にあると言えます。

自社の取り組みによって、自然災害発生時など緊急時に備えた事業継続力を強化するものが単独型(通常の事業継続力強化計画)であるのに対して、単独企業では対応できないリスクに対応するために連携して事業継続力を強化するものが、連携型(連携事業継続力強化計画)です。

例えば、共同店舗などのケースを考えてみます。

大型の建物(施設)に、複数の小売業者が集合して事業活動を行う、ショッピングセンターなどの施設は全国各地に存在しています。このような施設において自然災害が発生した場合、事業の継続を実現していくためには、自社単独だけの能力では難しいというのが現状でしょう。

従業員や顧客の安全確保・被害状況の報告といった初動対応や、自然災害発生時に備えた事前対策など、実効性の高い事業継続の能力強化を図るためには、施設内の小売業者が連携して取り組むことが不可欠となります。

このように、複数の企業・事業者が集まり、災害時の相互協力体制を構築するものが連携事業継続力強化計画です。

連携事業継続力強化における3つの連携態様

連携事業継続力強化計画においては、組合等を通じた水平的な連携、サプライチェーンにおける垂直的な連携、地域における面的な連携の3つの類型が想定されています。

連携事業継続力強化計画が想定する連携タイプは組合等を通じた水平的な連携、サプライチェーンにおける垂直的な連携、地域における面的な連携の3つ
(出所:連携型計画策定のためのハンズオンテキスト、中小企業庁・トーマツ)

組合等を通じた水平的な連携

同業種や異業種に属する複数の中小企業者がメンバーとなり、連携が構成されるケースです。

例えば、専門的な製品を製造している企業が、全国各地に存在する同業者で組合を組織している場合を考えてみます。

ある地域に大規模な自然災害が発生した場合、その地域の企業が被災した結果、製造設備が損壊し、生産を行うことができなくなったとします。もちろん、事前に災害を想定して機械の故障を抑制または故障しても早期の復旧ができるような対策を自社で行っていました。

ところが、自社の想定を超える災害であったため、製造設備の復旧見通しが立たないという事態に陥ったとします。

このようなケースでは、自社の事業継続力強化計画(単独型)では、早期の事業復旧は困難で、最悪の場合には事業継続そのものも難しくなってしまうといえます。

しかし、事前に他地域の同業者である組合企業と連携し、緊急時における代替生産の実施や、機械設備の貸与などを取り決め、それを計画としてまとめておけば、被災企業の事業継続を外部の経営資源を補完することによって製造活動を実現でき、社会に与える影響を最小限に留められるほか、顧客を失うことを防げることによって事業継続の実現ができるようになります。

この際、組合などに属する複数の企業によって策定されるものが、連携事業継続力強化計画です。

サプライチェーンにおける垂直的な連携

自動車の製造などにおいては、メーカー(製造業者)の下にさまざまな事業者が存在しており、各々の技術を活かした部品製造や組み立てを担当しています。

このようなサプライチェーンにおいては、特定の企業が自然災害によって被災することで、当該企業が製造活動を行うことができないような事態が生ずれば、サプライチェーン全体に対して大きな影響を及ぼしてしまいます。

そのため、同一のサプライチェーン内において、事前に、同種の事業を担う企業が水平的な連携体制を構築しておけば、緊急時には生産補完(代替生産)を行うことで影響を最小限にとどめることができます。

また、メーカーなどがリーダーシップをとり、サプライチェーン内の各事業者に対して事業継続力強化計画の策定支援を行うような取り組みも想定されています。

地域における面的な連携

商店街など、「地域内」のさまざまな団体による連携による取り組みであり、地方公共団体などの関与も想定されています。

連携事業継続力強化計画のメリット

連携事業継続力強化計画では、自社だけでは実現が難しい代替生産などが可能になるというメリットがあります。別の言い方をすれば、企業が相互に協力・連携することを通じて、事業継続力を単独では実現できないレベルまで強化し、かつ、事前対策のコストを低減させることができるのです。

自社単独でも、代替生産が行えるような事前対策を行うことは不可能ではありません。現在の施設(製造拠点)とは離れた場所に、全く同じ施設を建設し、稼働させずに待機させておくことで実現可能です。しかし、このような取り組みは多額の資金を必要とし、現実的な事前対策として適切とはいえず、実現可能性も極めて低いものです。

連携事業継続力強化計画であれば、企業同士が連携することを通じて、自然災害発生時などの緊急時に現有の経営資源を補完し合うことが可能となる、というメリットがあります。

連携事業継続力強化計画と(単独型)事業継続力強化計画の関係

連携事業継続力強化計画は、単独企業の事業継続力強化がベースにあって、初めて効果が得られるものであるという関係性を理解することが重要です。

連携事業継続力強化計画は単独型の事業継続力強化計画がベースになっている
(出所:連携型計画策定のためのハンズオンテキスト、中小企業庁・トーマツ)

自然災害発生時における事業の継続において、企業間の連携によるメリットは無視できないほど有益なものです。とはいえ、それはあくまでも個別企業が適切な対応を行ったうえでこそ、初めて発現が期待できる効果であるといえます。

連携型事業継続力強化計画の策定を行う場合には、まずは各企業が単独型事業継続力強化計画を策定し、自社における事業継続力を強化する。そのうえで、さらなる強化を目的に、連携企業が集合して連携事業継続力強化計画を策定するのが好ましいと言えるでしょう(ただし、連携事業継続力計画の認定において、連携する各企業が単独事業継続力強化計画を策定していなければならないという要件は存在しません)。

緊急事態発生時における中小企業同士の連携というのは、確かに重要なテーマではあるのですが、現実はそう簡単な話ではありません。詳しくは、連携事業継続力強化計画は機能するの?中小企業連携の難しさに整理してあります。

連携事業継続力強化計画の策定方法

連携事業継続力強化計画策定の手引き(中小企業庁のHPよりダウンロード可能)が準備されており、これを読み込めば策定に関するすべての情報は記載されています。

策定のプロセスや内容は、単独型と連携型で大きな違いはありませんが、連携型の場合には関与する企業数が増えるため、しっかりとした検討の場を持つことがポイントになります。連携企業の経営者(または、経営幹部)が一堂に会して検討する時間をどのように確保するのか、特に全国に点在するような組合などの組織が連携事業継続力強化計画を策定する場合においてはスケジュール調整などが大切になってきます。

また、単独型とフォーマットそのものは大きく違わないとしても、単独企業と連携体では、取り組みの内容に対して視点や切り口を変えていく必要があります。

単独型事業継続力強化計画の方が内容としては検討しやすいことも事実ですから、認定を受けるかどうかは別としても、まずは各企業で単独型事業継続力強化計画を策定し、各企業単位で検討を経たうえで、連携事業継続力強化計画を策定するのが現実的だといえます。

単独型事業継続力強化計画における協力企業

単独型事業継続力強化計画を策定する中で、連携事業継続力強化計画の策定に発展(策定を意識)することができるようになっています。

連携事業継続力強化の策定を予定していなかった企業・事業者であっても、単独型事業継続力強化計画を策定するなかで連携の可能性やメリットを感じた場合には、連携事業継続力強化計画の策定を検討してみるのも良いのではないでしょうか。

単独型事業継続力強化計画の中には、「事業継続力強化の実施に協力する者の名称及び住所並びにその代表者の氏名並びにその協力の内容」という項目があります。

ここには、事業継続力強化を進めるにあたって親事業者や政府関係金融機関等による働きかけや支援を受ける場合、その名称や協力の内容を記載することになっています。「協力」という言葉が使われていますので、「連携」とは異なり緩い関係性のことを意味していると考えられますが、交流のある地域外の同業者や地域の異業種企業などが思い浮かぶこともあるでしょう。

そのような場合には、協力体制の声掛けを行ったうえで、相手先企業にも事業継続力強化計画の策定を勧めてみるのもひとつです。

自社の事業継続力が強化されただけでは、社会の要請に応えられないことも考えられます。事業継続力強化計画を策定する企業・事業者が増えれば増えるほど、効果は大きなものとなっていくことから、策定の輪を広げていくことも大切な取り組みであるといえます。

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