ものづくり補助金の加点を狙う目的で事業継続力強化計画の認定を受けるのはOK?

事業継続力強化計画

事業継続力強化計画の策定動機

事業継続力強化計画の認定を受けることで、ものづくり補助金の加点とすることができます。それを目的に、つまり、ものづくり補助金の採択率を高めるために事業継続力強化計画の認定を受けるというのは良いことなのでしょうか。

もちろん、良い取り組みであるといえます。事業継続力強化計画の策定に関しては何が動機になったのかということはさほど大切ではありません。

ただし、事業継続力強化計画の策定プロセスは大切にすることをおすすめします。簡単に言えば、策定に自社が関与することがポイントです。

事業継続計画(BCP)の策定に関する現状

事業継続力計画と似たものに、事業継続計画(BCP)があります。

近年、自然災害等の発生が目立つようになってきていますが、それはインターネット環境の整備が進んだことやSNSツールの普及に伴って、リアルタイムで被害状況などを共有できるようになったことが大きな理由であり、もともと我が国において自然災害等の発生は昔から頻発していました。

そのため、国では自然災害等の発生時においても事業を継続することができるための取組として、事業継続計画(BCP)の策定を推奨していました。とはいえ、事業継続計画は難易度も高く、事業者にとっては時間や費用など様々なコスト負担が強いられる割には「優先順位が低い」ものとして認識され、普及に至りませんでした。

小規模企業白書2019によると、小規模事業者のうちBCPを策定しているのは全体の2.2%しか存在していません。

56.3%の事業者には存在すら知られていないことが分かります。

小規模事業者における事業継続計画(BCP)の策定状況
出所:中小企業庁、小規模企業白書2019

中小企業においてもそれほど策定状況は変わりません。

中小企業白書2019によれば、中小企業全体で事業継続計画(BCP)を策定している事業者は16.9%です。
企業規模(従業員数)が大きくなるほど策定率は増加していますが、それでも従業員100名以上の事業者でも34.2%に留まっています。

従業員規模別にみた事業継続計画(BCP)の策定状況
出所:中小企業庁、中小企業白書2019

このような状況下において、計画書そのものの策定よりも事業継続を行うための「能力強化」に軸足を置いた事業継続力強化計画の認定制度が令和元年7月16日よりスタートしたという経緯があります。

事業継続力強化計画は、事業継続計画に比べ策定しやすく、中小企業者にとっては負担が少ないほか、能力強化を図るという観点で、自然災害等での高い実効性が期待されています。

事業継続計画(BCP)と事業継続力強化計画については、事業継続計画(BCP)と事業継続力強化計画の違いを参考にしてください。

事業継続計画(BCP)の策定動機

事業継続計画を策定している中小事業者は全体から見れば非常に少数ということが言えますが、いったいどのような動機(きっかけ)で策定に至ったのでしょうか。

小規模企業白書によると、地域の支援機関(商工会・商工会議所、中小企業団体中央会)からの勧めが52.9%と圧倒的に多く、他にも行政機関・販売先・公認会計士や税理士・中小企業診断士・診断士など、第三者(利害関係者:ステークホルダー)からの勧めにより策定に至っていることが分かります。

自身の被災体験(9.2%)やハザードマップによる自社の被災リスクの顕在化(7.6%)など、自らが率先して策定に至ったというケースはそれほど多くはありません。

小規模事業者が事業継続計画(BCP)を策定したきっかけ
出所:中小企業庁、小規模企業白書2019

中小企業の場合もそれほど大きな違いは見られません。

最も多い動機は、販売先のからの勧め(23.1%)となっており、それ以外にも行政機関・地域の支援機関・仕入先・金融機関・最終製品のメーカーといった利害関係者からの勧めが多くなっています。

中小企業が事業継続計画(BCP)を策定したきっかけ
出所:中小企業庁、中小企業白書2019

事業継続計画の策定に至ったきっかけとしては、利害関係者からの勧めが最も多く、言い換えれば、そのような外部からの働きかけといった刺激が加わらなければなかなか策定に至るのは難しいというのが現状でしょう。

やはり、企業にとっては「明日の売上」や「今の利益」が重要なのであって、とりわけ、新型コロナウイルス感染症の拡大によって経営状況が厳しい企業が多い中、起こるかどうかも分からない自然災害等への備えに自らが率先して取り組む、というのは難しいのかも知れません。

そう考えれば、ものづくり補助金の採択率を高めるために「事業継続力強化計画の認定を受けたい」というのは、ある意味で自発的な取組であると捉えることもできるのです。

実は事業継続力強化計画はものづくり補助金申請者による認定が多い

事業継続力強化計画に関する統計データはそれほど多く公開されているわけではありませんが、中小企業庁による「事業継続力強化計画の認定状況等について」を取り上げながら、ものづくり補助金との関連性について触れておきます。

令和2年5月末現在、事業継続力強化計画の認定件数は8,600件であり、業種に注目してください。

認定を受けている業種として製造業その他が全体のおよそ7割を占めており、圧倒的に多くなっています

事業継続力強化計画の認定状況を見ると製造業が全体の7割を占めている
出所:事業継続力強化計画の認定状況等について、令和2年7月2日、中小企業庁

事業継続力強化計画の認定者のうち7割が製造業者である、というのは何を意味しているのでしょうか。

そもそも、中小事業者に製造業者が多いということであれば、この結果は納得できるわけですが、実際には製造業者よりも「小売業」の方が多いことが統計上分かっています。

また、「宿泊業・飲食業サービス業」も製造業者よりも多いのです。

業種別中小企業数
出所:中小企業庁、中小企業白書2020

あるいは、自然災害等への対応という点で、製造業者の意識が極めて高いということが言えるのであれば、事業継続力強化計画の認定事業者に製造業者が多いことは納得できます。

事業継続力強化ではなく事業継続計画(BCP)の資料を参考に確認してみます。

帝国データバンクの調査によると、事業継続計画(BCP)を策定している業種(業界)としては、「金融」が最も多く、次いで「農・林・水産」「製造」「サービス」「小売」となっています。

中小事業者に金融は少ないため除外し、一次産業も含まないで考えた場合には「製造」「サービス」「小売」の順に策定率が高いものと考えることができます。

事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査
出所:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2020 年)、株式会社帝国データバンク

とはいえ、いくら「製造業」が高いといっても19.6%に過ぎず、次の「サービス業」18.6%とは1%しか違いません。

このように、事業継続力強化計画の認定事業者に製造業者が多いのは、中小事業者の構成割合に製造業が多いということが理由ではなく、事業継続に意識の高い業種に製造業者が多いということでもありません

製造業者が多いのはものづくり補助金の加点制度が背景にある

事業継続力強化計画の認定事業者に製造業者が多いのは、ズバリ、ものづくり補助金の加点対象として認定を受ける事業者が多い、これが結論です。

ものづくり補助金の公式サイトでは、採択に関する細かな状況をデータポータルというかたちで提供しています。

申請業種に関する統計データによると、令和2年度の申請業種では製造業が圧倒的の多く、それ以外の業種はほぼ同じような構成比になっています。

これは、事業継続力強化計画の認定状況における業種構成と全く同じ傾向にあります。

ものづくり補助金データポータルによれば申請事業者は製造業が圧倒的に多い
出所:ものづくり補助金 データポータル

つまり、少なくても令和2年5月末時点においては、ものづくり補助金の加点を獲得するために事業継続力強化計画の認定を受けた事業者が多かったということになります。

これは、ある意味で当然といえば当然です。なぜならば、ものづくり補助金の採択率を高めたいのであれば、事業継続力強化計画の認定は不可欠だからです。

ものづくり補助金の採択のためには事業継続力強化計画の認定が不可欠

ものづくり補助金は、設備投資を行うような場合に補助を受けられる制度で、一般型では最大1,000万円の補助が受けられるとあって、製造業者に人気の補助金です。

補助金は申請すれば誰でも支給されるというものではなく、申請後、審査が行われ、そこで採択を得なければなりません。ものづくり補助金の場合には、事業計画書が審査されることになりますが、それとは別に審査時に有利な取り扱いを受けることができる「加点制度」というものがあります。

加点項目にはさまざまなものがありますが、令和2年度のものづくり補助金においては、4つの加点項目が示されています。

  • 成長性加点:経営革新計画の承認
  • 政策加点:小規模事業者または創業5年以内の事業者
  • 災害等加点:事業継続力強化計画の認定
  • 賃上げ加点等:規定された要件を満たす賃上げの実施計画

実は、ものづくり補助金においては、この加点項目をいかに積み上げられるのかというのが、採択率を高めるうえで非常に重要になってきます。

データポータルによれば、加点項目を3個積み上げた申請事業者の採択率が最も高いことが分かります。0個と1個では採択率が大きく異なることからも、最低でも1個は加点項目を積み上げたいと考えるのは当然のことでしょう。

ものづくり補助金で採択されるためには事業継続力強化計画の認定などの加点を積み上げることが大切になる
出所:ものづくり補助金 データポータル

この点、経営革新計画の承認を得ようとなるとそう簡単にはいかないものですが、事業継続力強化計画の認定はそれほど難しいわけではありません。

事業継続力強化計画であれは、自社で策定することができ、それほどコストも掛からず、認定までのハードルは低くなっています。ですから、ものづくり補助金の申請事業者にとって、事業継続力強化計画の認定を受けるのは、もはや当然のこととして考えて良いはずです。

もっといえば、真剣にものづくり補助金を狙うのであれば、事業継続力強化計画の認定を受けるのは必須であるともいえます。

策定のプロセスを重視する

とはいえ、事業継続力強化計画の策定を外部に丸投げしてしまうようなやり方はおすすめできません。

ものづくり補助金は、高額な機械設備等の導入を行うことになります。いくら補助金の支援を得られるとはいっても、中小事業者にとって1,000万円クラスの資金投入は、自己負担分も考慮すれば大きな投資であると言えます。

そのような投資を行うことを前提にすれば、自然災害等への備えについては最低限の対策を図っておくことは当然必要になってきます。自社の所在地にはどのような災害リスクがあるのかについて、ハザードマップを用いて確認をすることや、地震に関する将来予測もしておく必要があります。

インターネット上で今すぐできますので、確認してみてください。

ハザードマップで自社の災害リスクを確認する方法

そのうえで、地震が発生する確率が高いことを把握できれば、ものづくり補助金での設備導入時に耐震性を加味した設置などの対策を施すことができます。また、洪水など水害の危険性が高いことを把握できれば、設備を嵩上げして設置することや、保険に加入するなどの対策を設備導入時に同時に行うことができるようになります。

このように、ものづくり補助金の活用と同時に、事業継続力の強化も同時に実現することができるのです。

このような使い方をするのであれば、きっかけ(動機)としては「ものづくり補助金の加点項目」として事業継続力強化計画の認定を狙ったとしても、結果的には事業継続力強化を果たせるわけですから、むしろ一石二鳥と言えるのではないでしょうか。

ここで重要なことは、事業継続力というのは、第三者に作ってもらうというのではほとんど強化することに繋がらず、自分(自社)で考え・検討するというプロセスを経ることに極めて重要な意味を持ちます。策定にしっかりと自社が関与することが大切になるのです。

ものづくり補助金は年々レベルが上がっていますので、申請にあたっては事業計画書の策定に多大な時間が掛かることも理解していますが、事業継続力強化計画は少なくても経営者クラスが策定に関与し、自社の実情に合わせて実効性のある計画策定を行うことをおすすめしています。

事業継続力強化計画は自社だけでも十分に策定することができます。

事業継続力強化計画の策定に必要な時間は2日間あればOK

また、当サイトでも提供していますが、専門家と一緒に検討しながら策定を行う方法もあります。この方法であれば、2時間~3時間程度で策定を終えることができます。

専門家による事業継続力強化計画申請支援プログラムについて

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