連携事業継続力強化計画は機能する?中小企業連携の難しさ

事業継続力強化計画

事業継続力強化計画には、単独型と連携型の2つがあります。

(単独)事業継続力強化計画と連携事業継続力強化計画の違いは、自社の取り組みによって、自然災害発生時など緊急時に備えた事業継続力を強化するものが単独型(通常の事業継続力強化計画)であるのに対して、単独企業では対応できないリスクに対応するために連携して事業継続力を強化するものが、連携型(連携事業継続力強化計画)となっています。

詳しくは、連携事業継続力強化計画とは?単独型と連携型の違いについて、で解説しています。

ところで、地域内の親しい中小企業が数社で集まって、連携事業継続力強化計画を策定し、認定を受けることは可能でしょうか。それは可能でしょう。

では、実際に緊急事態が発生した際に、連携することによって事業継続への取り組みを協力しながらできるのでしょうか。それは、簡単なことではありません。

実は、自然災害発生時等の緊急事態において、企業同士が協力・連携し合うというのはそれほど簡単なことではないということを知っておく必要があります。

連携のニーズは高まっている

事業継続力強化計画と似たものにBCP(事業継続計画)があります。事業継続力強化計画とBCPは異なるところもありますが、自然災害等が発生した時に事業を継続するために事前に策定する計画という意味では、目的は同じです。

BCP策定企業は、現在策定済みであるBCPに対してどのような課題を抱えているのでしょうか。

株式会社NTTデータ経営研究所の調査によると、現在のBCPに対し課題がある企業のなかで、最も多く挙げられた課題は「外部からの調達・供給ができなければ事業継続できない事」となっており、「単一拠点で事業を行っており、代替となる自社拠点がない事」、「代替要員を配備するだけの余裕がない事」と続いています。

現在のBCPに対し課題がある理由
出所:「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(第5回)」、2019年3月8日、株式会社NTTデータ経営研究所

これらの回答は、自社単独で策定するBCP(事業継続計画)では緊急事態への対応に限界があること、を示しています。

事業継続力強化計画は認定制度がまだ始まったばかりであることから、今は自社単独での策定が中心です。

しかし、今後、実際に自然災害等が発生することで、事業継続力強化計画の実効性や有効性がクローズアップされてくれば、BCP策定企業と同様に、自社単独の事業継続力強化計画だけでは限界があるというような調査結果が明らかとされることは間違いないでしょう。

中小企業同士の連携の難しさ

そこで、事業継続力強化計画の認定制度では先を見越すかのように、連携事業継続力強化計画を策定し、認定を受けることができる仕組みが準備されています。

とはいえ、親しい企業同士が一緒になって連携事業継続力強化計画を策定し、認定を受けたとしても、それが実際に機能するか、実効性という観点では十分な議論や検討が必要になるといえるでしょう。

先の調査結果でも見たように、BCPにおいては以前から連携体制の構築が提唱され、進められてきました。しかし、それでもまだまだ議論の余地は残されています。

緊急事態発生時にしっかり機能するか

例えば、同一地域内の事業者が連携して事業継続力強化を図っていた場合、複数の事業者が同時に被災する可能性は高いでしょう。このような場合、自社の事業継続ですらままならない状況下にあって、果たして連携先企業の事業継続にどこまで協力することができるのかは疑問です。

あるいは、地理的に異なる同業者の仲間が連携して事業継続力強化を図っていた場合はどうでしょうか。1社が被災しても、場所が異なる他社は被災していない可能性が高く、協力はできそうに思えます。しかし、中小企業の多くはギリギリの経営資源で事業活動を行っていますので、いきなりの協力要請にどこまで対応できるのかは分かりません。もっといえば、地理的に離れていても、同業者である以上は「ライバル企業」なわけですから、自社の設備など知られたくないノウハウをどこまで開示しながら協力していくのか、という問題もあるでしょう。

自然災害等が起こる前には、連携や協力ということはいくらでも言えるのですが、実際に自然災害等により緊急事態が発生すれば、営利を目的とする企業がどのように行動するのか、というのは非常に難しい問題であると言えるのです。

連携というのは、比較的緩い関係性を意味する概念ですから、契約などによって取り組みが強制されるものとは異なるということも、大きなポイントであるといえます。

機能しやすい連携体制

連携事業継続力強化計画では、連携のパターンとして3つの類型が想定されています。

それは、組合等を通じた水平的な連携、サプライチェーンにおける垂直的な連携、地域における面的な連携、です。

連携事業継続力強化計画が想定する3つの連携パターン
(出所:連携型計画策定のためのハンズオンテキスト、中小企業庁・トーマツ)

これらの連携パターンは、連携体にトップ(統制役となる者)が存在することが特徴と言えます。

組合には、互選などにより選出された長が存在します。サプライチェーンには、そのチェーンを率いるメーカー(アセンブラー)が存在し、工業団地・商店街といった組織にも長が存在します。

このような組織体においては、普段からさまざまな取り組みにおいて共同が行われており、協力という意識も高い傾向にあります。また、トップにはある程度のパワーが担保されています(トップは大企業であることが多い)ので、強制とは言わないものの、緊急時に組織内の力関係が作用することで、連携した取り組みの実効性が高まりやすいことを指摘できます。

親しい企業同士が集まった連携体では、トップという役割を決めることはできても、普段から共同・協力を意識した取り組みを行っていなければ、緊急時にも協力体制を期待するというのは難しいわけです。

情報連携から始めてみる

株式会社NTTデータ経営研究所の調査によると、次代のBCP策定・運営に係る解決策への期待として、「危機発生時における被災状況共有」が最も高くなっています。

次代のBCP策定・運営に係る解決策への期待グラフ
出所:「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(第5回)」、2019年3月8日、株式会社NTTデータ経営研究所

経営資源にまで踏み込んだ企業間の連携に対して課題を感じながらも、一方で、現実的には緊急時における被災状況の共有ができる連携体制が期待されています。

緊急事態がひとたび発生すれば、混乱の中にあって、自社の被災情報を収集するだけで精一杯となります。周辺地域の被災状況などを把握できれば、事業の継続へ向けた対応もしやすいということがあるでしょうし、また、そのような情報連携の中で協力体制へと発展するという可能性も高い。

上の調査結果では、連携対象としては「密接な取引関係のある企業(調達先や納入先等)」を挙げる企業が多くなっています。これは、運命共同体としての存在である企業とであれば、緊急時にも連携体制を構築しやすいということを想定しているのでしょう。

単独型事業継続力強化計画書の協力者

単独型事業継続力強化計画の中には、「事業継続力強化の実施に協力する者の名称及び住所並びにその代表者の氏名並びにその協力の内容」を記載するところがあります。

経営資源などを介在させた連携ではなく、情報をベースとした連携を行うのであれば、単独事業継続力強化計画の協力者の欄に記載する方法もあります。

大企業であれば、一つの拠点が被害を受けても他の拠点でカバーができてしまうことで何ら問題がないことでも、経営資源が限定された中小企業・小規模事業者の場合には、ちょっとしたことでも事業継続を断念せざるを得ないようなことがあります。

そう考えるならば、確かに中小企業・小規模事業者は自然災害等に向けて連携をすべきであるという主張が正しいと言えますが、実際に機能するかどうかという点まで踏み込んで考えてみた場合、まだまだ議論しなければならないことはたくさんあるように考えられます。

事業継続は、企業の自助で行われることがまずは前提となりますので、自社の事業継続力強化計画を策定することを優先して行い、それを自社内に定着させ、緊急時に機能できるようにしたうえで、連携について取り組んで行くと良いのではないかといえます。

事業継続力強化への取り組みはいきなりすべてを完成させる必要はなく、急激に行う必要もありません。自社に根付くように、ある程度時間をかけてじっくりと進めていく方が、自社内への定着も含めて、実効性も高められるはずです。

そのうえで、連携ということに対して取り組みを深めていくようであれば、連携事業継続力強化計画が非常に有効なツールとなるはずです。

単独型の事業継続力強化計画を策定するだけでも大きなメリットを得ることができます。

詳しくは、事業継続力強化計画のメリット!4つの本質とインセンティブ6つへ。

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